2002 Fiscal Year Annual Research Report
個体発生において放射線がNT-3および左右非対称性発現遺伝子の発現に与える影響
Project/Area Number |
12670034
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
隅田 寛 広島国際大学, 保健医療学部, 教授 (10154626)
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Keywords | 放射線 / 発生 / NT-3 / PitX2 / Ets-2 / ホメオボックス遺伝子 / 中性子線 / X線 |
Research Abstract |
研究目的は放射線が多分化能を有する神経堤細胞を障害するか,あるいは左右非対称性発生にかかわるホメオボックス遺伝子の発現に影響を与えるか否かを調べて,放射線の発生過程に与える影響の原則的側面の見直しを検討することである. 妊娠7.5日のマウスに^<252>Cfあるいは3MeVの中性子線を0.5Gy,0.75Gyおよび1.0Gy照射した群に関して、NT-3,PitX2およびEts-2の遺伝子発現にあたえる影響を調べた.特に前年度は異常PitX2遺伝子の発現を強く示唆する例があったため、スクリーニング的に精査したが、新たにこの遺伝子に関する変異は認められなかった。完全大血管転換を合併している例や両大血管右室起始症の合併例も含め、照射群の妊娠18日胎仔のDNAを抽出して、上記遺伝子の変異をスクリーニングした結果でも、特異的な遺伝子変異は認められなかった。結論として、放射線照射により発生に関する特定の遺伝子特にホメオボックス遺伝子の変異は生じないことがわかった。 その他,ニワトリ胚に高エネルギーX線を照射して,NT-3,p53,ATMおよびRAD51の発現に与える影響を検討した.5Gyあるいは8Gyを照射後24時間のp53およびATM遺伝子の発現は対照群に比較して有意に低下していた。P53およびATMは放射線照射によるG1期停止や細胞死に関連する重要な遺伝子であり,放射線照射が細胞の防御機構に影響を与えた可能性が示唆され,異常発生のメカニズムを解明する上で興味深い.ただし、タンパクレベルではp53の低下は顕著ではなかった。また,RAD51遺伝子は放射線照射により最大2倍程度発現の上昇が認められた.これは、今までの報告と異なる結果であり、放射線に照射により、DNA修復遺伝子の発現が増加する可能性がわかった。 以上の結果から、放射線照射により、発生に根本的に関わる遺伝子に特異的な変異は起こらないこと、そして、細胞の修復システムに関しては新たに検討する必要性が示唆された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Kumazaki T.: "Effect of BCL-2 down-regulation on cellular life span"Biogerontology. 3. 291-300 (2002)
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[Publications] Kumazaki T.: "Life span shortening of normal fibroblasts by overexpression of BCL-2 : a result of potent increase in cell death"Experimental Cell Research. (印刷中). (2003)