2001 Fiscal Year Annual Research Report
心臓大血管手術後の高次脳機能障害の成因と予防に関する研究
Project/Area Number |
12671502
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Research Institution | KITASATO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
外 須美夫 北里大学, 医学部, 教授 (60150447)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 浩嗣 北里大学, 医学部, 助教授 (50224077)
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Keywords | 心臓手術 / 脳機能 / 麻酔 / 空気寒栓 |
Research Abstract |
経食道心エコーと呼気二酸化炭素濃度測定を併用する新しい心腔内残留空気除去法を試み、本方法の脳機能障害に及ぼす効果を検討した。本方法では、人工心肺離脱前に肺血流を増加させて肺血管系の空気を除去するため、リザーバーを徐々に上昇させることで体外循環のポンプ流量を減らすことなく肺血流を徐々に増加させることができる。肺血流がどの程度確保されているかを呼気二酸化炭素分圧(25mmHg以上)と肺動脈圧(前値の75%以上)で評価した。左心ベントにより肺静脈から戻る血液を十分に吸引しリザーバーに戻し、左心ベント吸引の有効性と空気の非存在を経食道心エコーで確認した。本方法により心腔内の残存空気を除去し、人工心肺後の空気塞栓による脳合併症の発生を予防できるか検討した。53例中、あきらかな脳合併症として、選択的脳灌流を行った一例で広範囲脳梗塞が認められたが、その症例では残存空気は認められず、動脈壁からのDebrisあるいは血栓による脳障害と考えられた。また、一例で痙攣脳波が観察され、同時に大量の空気が確認されたことから空気塞栓によるものが推測されたが、術後の脳機能には障害を残さずに回復した。それ以外の症例では、空気の残留が約半数で認められたが、術後脳機能障害の発生とは関連を見いだすことはできなかった。本方法によっても完全に心腔内残留空気を除去することはできず、心臓大血管手術後の脳機能障害の防止策としては不十分なことがわかった。また、脳機能障害には、空気とともに血管壁の硬化巣や血栓が重要な働きをすると思われた。また、近赤外線分光法による脳内組織酸素飽和度(rSO2)を測定して、rSO2低下程度と脳障害発生の関連を検討した。rSO2から推測される復温時の脳酸素需給バランスの異常は人工心肺患者の脳障害と有意な関連は認めらなかった。人工心肺手術における脳酸素需給バランスの評価にはrSO2だけでは不十分であり、さらなる評価法の確立が求められる。
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Research Products
(2 results)