2000 Fiscal Year Annual Research Report
中国唐代初期小説の研究-その小説史的位置の見直しとそれにもとづく作品論の試み-
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12710243
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 良恵 (溝部 良恵) 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (80322064)
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Keywords | 唐代小説 / 『太平広記』 / 『広異記』 / 『紀聞』 / 「戴氏広異記序」 |
Research Abstract |
平成12年度の本研究の研究成果は大きくわけて三つある。 1.唐代初期における小説制作をめぐる状況を顧況「戴氏広異記序」の分析を中心として行なった。一見荒唐無稽に思われる顧況の同序が『易伝』などの思想を踏まえた上で書かれたものであり、六朝志怪から唐代伝奇へと中国の小説が変遷していく過程における小説観の変化を反映したものであることを明らかにし、この成果に基づいて口頭発表を行なった。(日本中国学会第52回大会・2000年10月) 2.唐代初期小説として本研究が注目している『紀聞』『広異記』についての具体的な作品論として、「伝奇勃興以前の唐代小説における虚構について-「准南猟者」(『紀聞』)と「安南猟者」(『広異記』)の比較分析を中心として-」(『日本中国学会報第52集』)を発表した。その中で中唐伝奇勃興以前の小説中にすでに様々な作者の創作意識を読み取ることができることを明らかにした。 3.中国、台湾において『太平広記』の諸版本、『広異記』の各抄本についての調査を行った。台湾大学所蔵の孫校本『太平広記』は、現存するなかで最も『太平広記』宋本に近いといわれているが、これまで日本ではあまり知られてこなかった。そこで『広異記』の逸文を中心に孫氏校本を調査した結果、孫氏校本の重要性を認識するとともに、孫氏校本、陳氏校本などの残宋本が、『広異記』の明抄本、清抄本との関連性が高いこと、よって『広異記』の各抄本も時代は下るものの、これまで考えられてきた以上に有用な本であることを確信した。来年度はこれらの調査の成果をもとに、『広異記』の新たな版本を作ることを目指したい。
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Research Products
(1 results)