2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12710264
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
井川 壽子 鶴見大学, 文学部, 専任講師 (60318912)
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Keywords | 再帰性 / 相互性 / 相互代名詞 / お互い / 事象意味論 / 事象項 / 内包性 / 照応代用形 |
Research Abstract |
1.日本語相互代名詞の用例探索源として、朝日新聞のCD-ROM版、英語相互代名詞の用例探索源として、New York TimesのCD-ROM版を利用して、データベースを大幅に拡充することにより、広範な用例、文脈の中から、文法的偏りのないよう配慮し、照応代名詞類の言語資料の採取、分析をすすめた。 2.アリゾナ大学言語学科に出張し、言語類型論、論理学、意味論、言語哲学、ロマンス諸語などの専門家とミーティングを持ち、事象意味論のメカニズムの精緻化をすすめるとともに、一般言語理論としての照応理論を一般事象意味論のなかに明確に位置づける努力をした。「事象」の表出程度が極めて高い日本語型言語と、それが比較的弱い英語型言語の違いが、照応理論としての相互性の論理学のうえで有意差としてあらわれることをみた。 3.日本語照応代用形「お互い」の意味計算においては、理論的洗練と形式上の簡潔化に関して、成果をあげつつある。「お互い」を数量詞的性質を佩びたもの、すなわち、事象演算子とみなし、述語のもつ事象を量化する存在量化詞であると考える分析を採ることにより、「お互い」の相互用法のみならず、非相互用法をも統一的に説明する言語理論を構築することが可能となることを示した。事象分析の枠組においては、事象量化の一般原則が、照応理論における述語制約を包括的に説明することを示唆するものである。
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