2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12710265
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
中島 正太 徳島文理大学, 文学部, 講師 (40268701)
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Keywords | 19世紀 / イギリス小説 / 医療 / 介護 / ジョージ・エリオット |
Research Abstract |
以下の問題(1)および(2)について調査・研究を行い、論文を作成した(論文題名などは裏面を参照)。 (1)19世紀イギリス小説に見る医療改革 ジョージ・エリオットの『ミドルマーチ』(Middlemarch)において医師リドゲイトが行おうとして挫折した医療改革について、当時の医療事情を調査し、また作者が行っていた医学雑誌『ランセット』(Lancet)からの抜粋も参照して再検討した。結果、リドゲイトの医療技術は当時においても水準の高いものであったこと、しかし当時の医療問題は、実は政局や歴史的背景とも深く関係しており、高い技術がそのまま患者たちに受け入れられるとは限らなかったこと、などが明らかになった。つまり、リドゲイトの医療改革失敗は、彼個人の問題であると同時に、19世紀初期のイギリスにおける、医療も含めた社会全般の問題でもあることを論証した。 (2)「病める語り手」としての一人称 同じくジョージ・エリオットの『引き上げられたヴェール』(The Lifted Veil)における、病と同時に他人の心を読むことができる超能力を身につけた語り手について、その病と語りの相関関係をについて考察した。その際、この語り手を、当時流行したうつ病や神経症といった精神的な病や、当時の精神医学に関する研究と関連づけて解明することを試みた。さらに、同作品を18世紀末から19紀にかけてヨーロッパで流行した、薬物中毒者や病人による一人称という散文の叙述形式(ド・クィンシーの『阿片常用者の告白』やドストエフスキーの『地下室の手記』など)と比較することで、「語り」という小説の技法そのものが、当時の医療事情と連動して発展している場合があるということを論証した。
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[Publications] 中島正太: "A Story Told by a Sick Body : Narrative as Illness in George Eliot's The Lifted Veil"『徳島文理大学 文学論叢』. 第18号. 1-15 (2001)
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[Publications] 徳島文理大学 英米文学科: "『言語・文学と文化-ヒューマニズムを中心として』(中島論文"Unraveling a Human Lot : Medical Reform and Political-Historical Dynamics in George Eliot's Middlemarch")を所収)"徳島文理大学. 300 (2001)