2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12710271
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
美留町 義雄 大東文化大学, 文学部, 講師 (40317649)
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Keywords | ドイツ近代文学 / ゲーテ / メディア技術 / 書誌学 / 印刷・出版 / 親和力 / 口承文学 / 著作権 |
Research Abstract |
(1)ゲーテ時代における書籍メディアをめぐる諸状況、つまり印刷技術や識字教育の実態、さらに著作権が確立して文学作品が商品として市場に流通する経緯を、メディア技術史、社会文化史視点から調査した。その結果、特に十八世紀後半のドイツ語圏においては、書物の出版件数が飛躍的に増加し、口承文化から印刷・出版文化への過渡期にあたることが確認された。ただし、職業としての作家の地位に関しては、著作権や印税等の経済的条件が依然として劣悪であり、その確立は出版先進国であるイギリスに大きく遅れをとっている事実が判明した。 (2)上記の分析によって得られた結果を、ゲーテ自身の文学作品を通じて検証する作業を行った。そのために、ドイツ古典出版社の最新版ゲーテ全集、およびメディア関係のゲーテ研究書を購入した。この研究は継続中であるが、現段階においては、口承から書承という先のメディアの変遷がゲーテ文学の中では「音読から黙読へ」というコミュニケーションの変化となって現れ出ている点1)と、彼が劣悪な文筆業の地位を憂慮してその向上を訴え続け、ドイツ語圏で初めて著作権を獲得した点2)が確認された。 (3)現在、メディア分析をゲーテ文学研究に援用する本研究のモデルとして、小説『親和力』に関するデータベースを作成している。今のところ、この小説においては、口承-書承-映像というゲーテ時代のメディアの変遷が、かなり色濃く反映されていることが検証されている。将来的には、この結果をゲーテ文学一般に敷衍することになる。なお、(1)(2)の研究成果は、一本の論文にまとめて学会誌に投稿した。(現在掲載審議中)
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