2000 Fiscal Year Annual Research Report
黙読時文処理過程における要素の長さ及び韻律構造の影響
Project/Area Number |
12710281
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
広瀬 友紀 電気通信大学, 電気通信学部, 講師 (50322095)
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Keywords | 文処理 / 韻律構造 / 日本語関係節 / Sentence processing / prosody |
Research Abstract |
本研究では,次のような仮説を検証することを目的としている。 1.黙読における統語処理過程においても,入力に対して初分析の段階で統語構造と同時に韻律構造(major phraseを含む)が構築される。 2.統語構造の再分析が必要となった場合,初分析時に構築されたmajor phrase boundaryとマッチするような位置にclause boundaryが置かれるような構造がより選択されやすい。 今年度は,1 minor phraseからなる名詞句(例:{森下})vs.2 minor phrasesからなる名詞句(例:{森下}{新二郎})のペアなどを用い,次のような実験を行った。 (i)当該の1 minor phrase vs.2 minor phrasesにおいてのみ対立する名詞句で始まる刺激文のペアが,理論的に予測される位置に韻律境界を有するかどうか,不完全文朗読課題のいてデータを収集し,朗読時の音声のピッチパターンを分析した。 (ii)(i)により,あらかじめ正確に朗読時の韻律パタンが予測しうることを確認した刺激文を用い,黙読による文完成課題を使った実験を行った。これは,研究の背景欄に示したような不完全文のセットを被験者に与え,これに語句を加えて文を完成させることにより,不完全文にどのような統語構造が与えられていたのかを明らかにする実験である。 その結果,以下のことが明らかになり,仮説を裏付けるものとなった。これらの成果は別紙に記載したとおり2編の論文に発表した。 (1)「森下が/森下新二郎が新薬を心から信用した友人達に...」のような節境界曖昧性において文頭から2 minor phraseめの位置に韻律境界が比較的おかれやすく,その結果この位置に節境界があるような統語構造が与えられ易いこと。 (2)従って,文頭のガ格名詞句が2 minor phrasesからなる場合はこの直後に,そして文頭のガ格名詞句が1 minor phraseからなる場合はその後の,同じく1 minor phraseからなるヲ格名詞句の直後に節境界を有すような統語構造(前者では"[森下新二郎が[新薬を心から...",後者では"[森下が新薬を[心から...")が与えられ易いこと。 さらに,現在,self-paced reading実験で文節ごとの読み時間をパソコンを用いて1/1000秒単位で計測することにより,オンラインの処理過程をより正確に反映するデータを収集し,(ii)での結果と照合するという実験を準備中である。刺激文中の個々の語の諸特性が生み出す誤差を排除するため,「日本語の語彙特性」データベースを利用し,刺激作成にも最新の注意を払う。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Hirose,Yuki: "The Role of Prosodic Structure in Resolving syntactic Ambiguity"音声研究. 4(印刷中).
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[Publications] Hirose,Yuki: "The Proceedings of the First Tokyo conference on Psycholinguistics"The Role of Constituent Length in Resolving Reanalysis Ambiguity. 55-74(20) (2000)