2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12720024
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
柴崎 暁 山形大学, 人文学部, 助教授 (50261673)
|
Keywords | 抽象的法律行為 / スイス債務法典 / 不当利得 / 債務承認 / 単純約束 / 書証 / 裁判外の自白 |
Research Abstract |
本題に入る前に、日本の与信取引における債務名義獲得のための潜脱的公証実務「無因債務契約執行証書」を検討した(00年6月日本公証法学会口頭報告、立命館大学)。昭和五五年民事執行法制定作業のなかで、学説はこの実務の「仮装性」「脱法行為性」を非難し、執行証書の債務名義性の拡張に反対した。執行証書の問題に限定した議論とはいえ、無名無因債務契約の有効性に疑問がなければ起こり得ない批判であることが明らかとなった。 次に、スイス債務法17条自体を扱った作業として、「スイス債務法典十七条における債務承認とそのcause-Walter YUNGによる訴訟法的抽象性の理論-」と題する研究報告を、早稲田大学奥島孝康教授主催の商法研究者の合宿セミナーにおいて行った(00年9月、早稲田大学菅平セミナーハウス)。Walter YUNGは、,Andreas von TUHRら実体説が主張する、旧債務と債務承認との訴権併存の理論を逐一批判、非併存説に対する前者らからの非難に対しては、訴の利益論・既判力・争点効など訴訟法理論を駆使して反論していることが明らかとなった。 2001年3月の渡航で、ロマンド諸州の実体説に影響を与えたと推測されるvon TUHRの仏語版(Partie generale du droit des obligatons)を複写し持ち帰ることができた(日本国内に所蔵なし)。また、同渡航で、この主題につきストラスブール大学F・ジャコブ教授に意見を聞くことができた。 また、日本の判決手続におけるこの問題の検討をあわせ行った(数回の東京出張による文献収集の成果)。請求原因事実たる債権関係の同一性の識別が可能であれば、法律行為の causeを示さない訴も受理される。例えば、準消費貸借証書を用いれば、旧債務の存在を承認する意思の経験則上の推定と間接反証による既存債務の不存在の証明の関係は、債務承認の無因性の証拠法説と接近する可能性がある(最判昭43年倉田評釈参照)ことが明らかになった。
|