2000 Fiscal Year Annual Research Report
民事訴訟における判決手続と和解手続の交錯に関する研究
Project/Area Number |
12720030
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
畑 瑞穂 神戸大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (00218471)
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Keywords | 民事訴訟 / 争点整理 / 証拠調べ / 和解 |
Research Abstract |
民事訴訟において、判決手続の審理過程と和解勧試の過程が交錯することからどのような影響が生じるか、それをどのように調整すべきか、という問題をいくつかの観点から検討し、初年度である今年度は以下のような知見を得た。 第一に、手続過程の内容的な規律(主張やこれに対する陳述のありかた、主張段階と証拠調べ段階の関係等)については、判決を念頭に置くか和解を念頭に置くかによって、主張されるべき事実や証拠調べをすべき場合といった点で、かなり違いがありうると考えられる。 第二に、手続主宰者の役割についても、アメリカの議論においては、裁定者と調停者の役割衝突の問題が指摘されることが多い。本研究の文脈で言えば、判決をする裁判官が和解過程にも関与することには手続的公正等の点で問題がある、といった指摘である。 第三に、当事者・訴訟代理人(弁護士)の役割という面でも、違いがありうるという指摘がアメリカでなされている。例えば、弁護士が訴訟におけるアドヴァーサリアルなスタイルに染まっているためにクリエイティブな交渉・和解を疎外している、といった指摘である。この点については、弁護士界にアドヴァーサリアルな風土が根強いアメリカの特殊性という面もあろうが、原理的には、第一点とも関連して、日本においても考えるべき問題を含んでいよう。 総じて、日本では、これらの点について、従来理論的な検討はあまりなされてこず、多くの面において裁判官の裁量に事実上委ねられてきたと考えられる。次年度においては、それでよいのか、対処を試みるとすればどのような方法がありうるか、といった点も含めて、研究を継続する。
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