2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12740153
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小川 泉 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20294142)
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Keywords | 暗黒物質 / アキシオン / 人工原子 |
Research Abstract |
素粒子・宇宙物理学の分野における最近の重要な問題の一つである宇宙暗黒物質の正体はいまだに明らかではないが、アキシオンは有力な候補の一つである。その質量は様々な宇宙・天体物理学的な考察により、10^<-3>-10^<-6>eVの領域に絞られている。その存在を検証するため、世界中でいくつかの実験・研究が行われているが、最も有力な実験的方法は強磁場中に置かれた共振空胴中でアキシオンをマイクロ波光子に転換し、その光子を検出するものである。現在、日本と米国の2つのグループがこの方法に基づき、質量10^<-4>-10^<-6>eVのアキシオンに対する理論的数密度限界までの感度を持った探索実験を行っている。しかし、上記の手法は共振空胴の物理的な大きさなどの制約により、それより重い領域、すなわちmeV程度の質量領域に対して適用することは困難であり、この様なアキシオンに対する探索手法は未だに決定的なものが存在していない。そこで、本研究では人工原子を用いて、この領域の質量を持ったアキシオン探索用検出器の開発を目的としている。 meVの質量領域は波長域では遠赤外光に相当するがこのような波長域には今まで単一光子の検出手段が存在していなかった。最近、人工原子の単電子トランジスター(SET)とよばれる作用を利用すると非常に信号対雑音比の良い単一光子検出が可能であることが報告されている。これを利用し、小型の共振空洞と一体化された遠赤外光検出器を多数用意し強磁場中に設置することにより、比較的短時間で今までの実験(太陽アキシオンの観測など)よりも良い感度で探索実験を行えることが期待される。このアイディアに基づき実験の有効性を検証するため、今年度は単一遠赤外光検出器の低温環境テストベンチの整備、及び試料の作成を行った。
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