2000 Fiscal Year Annual Research Report
揺動するポテンシャル中のブラウン粒子による蛋白質のモデル化に関する研究
Project/Area Number |
12740228
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩井 俊哉 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (80250728)
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Keywords | ブラウン運動 / 蛋白質 / 確率共鳴 / Resonance Activation / 確率的エネルギー論 / 確率微分方程式 |
Research Abstract |
蛋白質は,分離できない多くの時間スケールを含む系である.蛋白質の動力学を有限な数値時間で効率的に計算できる蛋白質の数値モデリングを行なうため,分離できない時間スケールの削減の方法を求めることが目的である.その出発点として確率微分方程式で記述される分離できない複数の時間スケールを含むモデルの研究を行っている.具体的には,二つのバインディングポッケットがあるレセプター蛋白へのリガンドの結合の問題のプロトモデルと考えられるStochastic Resonance(SR)(ダブルウェルポテンシャルに振動外場を加えた場合のブラウン粒子のモデル)と,単一のレセプターに結合したリガンドが確率的に揺動する外力でEscapeする問題のモデルと考えられるResonance Activation(RA)に取り組んでいる. SRをStochastic Energetics(SE)の方法で解析し,SEの定式で得られる一周期あたりの外力のなす仕事がSRのよい指標である事がわかった.また,inter-well resonanceとintra-well resonanceの相違を表すよい指標と考えられる外力の位相とブラウン粒子の運動の位相差を,熱的なノイズの関数として調べ,この位相差もSRのよい指標になる事がわかった.さらに,外力のする仕事分をポテンシャルの有効的な減少分として評価し,外力の時間スケールを削減した有効モデルを定式化することに現在取り組んでおり,これは来年度にかけての課題でもある. また,RAの典型的なモデルであるポテンシャルの傾きが異なる2状態をマルコフ遷移する系でのescape問題を,やはりSEの方法で解析した.外系のなす仕事が最も大きくなる遷移確率のとき,mean first passage timeが最も大きくなると期待したが,そのような傾向はみられず,外系のなす仕事はリガンドの初期位置に依存しており,ポテンシャルのより深い位置に初期に位置したリガンドの方がより少ない仕事で脱出することがわかった.
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