2000 Fiscal Year Annual Research Report
新生代後期の急速な海進期における海底生態系の古生態学的手法に基づく高精度復元
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12740291
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
奈良 正和 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助手 (90314947)
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Keywords | 氷河性海水準変動 / 海進 / 海底生態系 / 生痕化石群集 / 化石群集 / 古生態学 / シーケンス層序 |
Research Abstract |
銚子半島に分布する更新統下総層群"香取層"は,陸棚から陸域の堆積物で構成され,従来,累重する2つの堆積シーケンスからなると考えられてきたが,累重する4つの堆積シーケンスに区分できることが判った.これらのシーケンスの房総半島における標準層序との対比については火山灰層序学的見地から検討中である. 香取層基底の不整合面(シーケンス境界)は,海進期の波食台で形成されたと考えられる.この不整合面から下位の上総層群の半固結泥層にのびる生痕化石には従来言われてきたような穿孔貝の巣孔だけでなく甲殻類や蠕虫類?の居住痕も存在し,計8生痕属に達すること,それらは海進時の波食台に露顕したファームグラウンドに形成されたものと,より沖合の砂泥質陸棚の海底面直下に存在した潜在ファームグラウンドに掘り込まれたものとの異なる2つのグループに分けられる.顕在ファームグラウンドには生痕がいっさい形成されていない部分もあった.また,波食台上に存在するラグには,生物遺骸片やノジュール化した泥岩が豊富に含まれる.これらはそれぞれ,シェルグラウンドやハードグラウンド(ロックグラウンド)の"島"を形成し,そこにはそれぞれスピオ科多毛類の居住痕や蔓脚類の居住痕などが見られる.ここではトウキョウホタテなどの表生種やエゾタマキガイなどの浅潜没種からなる化石群集が共産する.さらに,フサゴカイ類の居住痕が著しく密集する層準も局所的に観察されることがわかった.以上の結果は,従来ほとんど知られていなかった海進期の波食台における海底生態系ならびにその変遷に関して新しい知見を与える. そのほか,房総半島に分布する下総層群藪層のエスチャリー成ならびに海進期の内湾成の泥質堆積物において,ゴイサギガイをはじめとする貝化石群集ならびに歪形ウニ類の生痕化石をはじめとする生痕化石群集を観察した.これらの古生態学的意義については現在考察中である.
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