2000 Fiscal Year Annual Research Report
電子励起状態を経由する表面反応過程の電子刺激脱離法による研究
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12740313
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 岳彦 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (90242099)
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Keywords | 電子刺激脱離 / 電子励起状態 / Cu(100) / Ru(001) / Li / 水素原子 / 水素化反応 |
Research Abstract |
本研究の目的は固体表面上の吸着構造を設計し,化学結合の状態(配向、結合次数)に大きな摂動を加えたうえで、電子励起を行うことにより、結合を活性化して、新規反応を開拓することである。そのためには、適切な系を選択することと、観測方法をオプティマイズすることが重要である. 今年度の成果としては、論文発表に至ったものとして,Cu(100)表面上のLiとCOの共吸着によるCO伸縮振動数の大きい低波数シフトの観測である.清浄Cu(100)表面上のCO吸着はatopサイトであり、CO伸縮振動数は、気相の値から70cm-1低波数シフトした2070cm-1である。ところが、Liが共吸着すると、CO伸縮振動数が1200cm-1と870cm-1も低波数シフトすることを高分解能電子エネルギー損失分光法により見出した。この振動ピークは、取り込み角度依存性を測定すると、双極子活性なモードであり,CO結合方向は表面垂直方向に近いことがわかる.この系について、更に密度汎関数法によるシミュレーションを行い,吸着構造の最適化、並びに振動数の計算を行った.その結果,COとLiが両方とも4-fold hollowサイトに吸着した構造をとり、CO結合長が、気相の場合から13%伸長していること、実験値に近い1281cm-1のCO振動数が求められた.この系は、共吸着Liの電子的効果によりCO結合が著しく弱められていることを示しており,この系を、電子励起経由のCO結合解離反応、並びに、水素化(メタノール合成)の有望な対象となりうることが示された. 更に、触媒的に重要な反応である,水素化過程の反応物である金属表面上の水素の存在状態に関する研究を行った.電子刺激脱離のプロトン脱離収率の温度依存性を測定することにより、Ru(001)上の吸着水素が、熱脱離をする前に,サブサーフェスサイトに移動していることを示唆する実験結果を得ているが、それと関連して,重水素を用いた昇温脱離測定、並びに、1,3-共役ジエンの水素化反応の研究を行っている.これらから、サブサーフェスサイトを経由する水素が、水素化反応において、重要な役割を果たすことがわかった.現在,対象となるジエン分子を種類を変えることにより反応機構を調べるための研究を行っている。また、TP-ESDIAD/TOF装置にパルスバルブを組み込み,パルス状吸着過程を電子刺激脱離観測するための装置改良を継続している.
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Research Products
(1 results)