2000 Fiscal Year Annual Research Report
温度応答性高分子を用いた陰イオンの分離分析法の開発
Project/Area Number |
12740403
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
菊地 洋一 岩手大学, 教育学部, 助教授 (50241493)
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Keywords | 温度応答性高分子 / ポリビニルメチルエーテル / 溶媒抽出法 / 陰イオン |
Research Abstract |
本研究では,温度応答性高分子を用いた陰イオンの分離分析法の確立とともに,分離分析法への応用に際しての温度応答性高分子の基本的な性質を明らかにすることを目的としている.本年度(平成12年度)は,温度応答性高分子としてポリビニルメチルエーテル(PVME)を用い,種々の条件下でのPVMEの凝集特性と陰イオンの抽出挙動について検討した.その結果,以下のような知見が得られた. 1.種々の塩の共存下で,PVME(0.1%)の凝集温度の違いを,目視法および分光光度法で測定した.その結果,凝集温度は陰イオンの種類によって大きく異なり,水和エネルギーが大きな陰イオンが共存すると低温で凝集することがわかった.しかし,陽イオンの種類による違いは見られず,この現象は,一般に考えられているような,単純な塩析効果では無いことがわかった.PVMEと陰イオン間になんらかの相互作用が働いていると考えられる. 2.種々の条件下(振とう温度・時間,共存塩の種類・濃度)でのPVMEの凝集率をTOC装置を用いて測定した.PVME(0.1%)とNaCl(0.1M)混合溶液では,50〜60℃で凝集率は約90%に達し,それ以上の温度では凝集率は低下した.一方,PVME(0.1%)とNa_2SO_4(0.1M)混合溶液では,50℃以上で凝集率は96%であり,凝集率の低下はなかった.塩の種類によって,凝集率が単純な変化をしないことを,分離分析へ応用する際,留意する必要があることがわかった. 3.ハロゲン化テトラブチルアンモニウム塩のPVME凝集相への抽出挙動を調べた結果,抽出率はCl^->Br^-〜I^-の順であった.これは,通常の有機溶媒への抽出挙動とは全く異なる興味深い結果である.来年度は,さらに陰イオンの抽出挙動の詳細とクロマトグラフィーへの応用について検討していく予定である.
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