2000 Fiscal Year Annual Research Report
実世界のカオスに影響を及ぼすダイナミカルノイズの定量的評価
Project/Area Number |
12750055
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
等々力 賢 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (10270886)
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Keywords | カオス / ダイナミカルノイズ / 特異値分解 / ゆらぎ / 電子回路 / 測定ノイズ |
Research Abstract |
実世界のカオスに影響を与える「ダイナミカルノイズ」について解析を行った。「ダイナミカルノイズ」は従来の定義では直感的に理解することが困難であったが、本研究において、「ダイナミカルノイズ」をカオスシステム内構成要素の熱的あるいは他の何らかの原因によるゆらぎであるとする現実的な解釈を行い、定義式を相応な形に置き換えることにより、物理的視点からの理解だけでなく数値解析を行う実用上でも「ダイナミカルノイズ」の扱いが非常に容易となった。また、「ダイナミカルノイズ」を「測定ノイズ」と区別する新しい方法を提案した。これは、カオス自体の時間的なゆらぎに影響を与えるという「測定ノイズ」にはない「ダイナミカルノイズ」の性質を利用したものであり、カオスシステムを構成する直交基底ベクトルの時間的なゆらぎを観測することにより得られる。本手法を、計算機上で人工的に作成した種々のノイズを含む時系列データに対して実際に適用した結果、「ダイナミカルノイズ」を含むデータの場合には、「ノイズなし」のデータ及び「測定ノイズ」を含むデータと比較して、非常に顕著な基底ベクトルの時間的なゆらぎが観測された。これは、従来から非常に困難であった「ダイナミカルノイズ」と「測定ノイズ」ととの区別が、本手法により可能であることを示す結果を示している。また、時間的なゆらぎの程度は、相関係数や正規化平均自乗誤差として具体的な数値として表すことができるため、目的の「ダイナミカルノイズ」の定量的な評価への道を開く可能性を示したものといえる。一方、実世界のカオスにおける「ダイナミカルノイズ」の影響を調べるために電子回路における実験も行い、数値計算の場合と同様に基底ベクトルの時間的なゆらぎを観測することができた。この結果は、今後予定される「ダイナミカルノイズ」の本質的な性質を分析するための冷却実験等に対する予備的考察を与えるものと思われる。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] M.TODORIKI,H.NAGAYOSHI and A.SUZUKI: "Estimation for Degree of the Influence of Dynamical Noise on Chaotic Data using SVD Method"Proceeding of SIAM, Pacific Rim, Dynamical Systems Conference. 89-90 (2000)