2000 Fiscal Year Annual Research Report
鳥類胚培養システムを用いた内分泌かく乱物質の高感度総合的アッセイの開発
Project/Area Number |
12750701
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西島 謙一 名古屋大学, 工学研究科, 助手 (10262891)
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Keywords | 内分泌かく乱物質 / 鳥類胚 / 胚培養 |
Research Abstract |
近年、非常に少量でも生物に様々な悪影響を及ぼす物質が内分泌かく乱物質として働く恐れが指摘されている。本研究では鳥類の胚発生を卵殻外で進行させる胚培養系を用いて簡便かつ網羅的に内分泌かく乱物質の影響を評価するためのアッセイ系を構築することを目的としている。本年は合成洗剤の界面活性剤として広く用いられてきた物質であるノニルフェノールの影響について主に検討した。 まず、投与方法の検討を行った。女性ホルモンであるエストラジオール用いた実験においてよい成績を示した卵白への投与及びろ紙を用いた投与の2方法について検討した。その結果、ノニルフェノールは、卵白に直接投与するとまもなく沈殿し胚に吸収されないことがわかった。一方、ろ紙にしみこませて投与した場合は生存率低下および雌化が認められ、効率よく吸収されているものと考えられた。以上より環境ホルモン物質の評価には、ろ紙を用いて投与する方法が良いことがわかった。 次にノニルフェノールが胚発生に及ぼす影響を検討した。まず胚の生存率を検討したところ、容量に応じて生存率が低下することが観察された。また生存胚においても有意に胚重量が低下した。生殖巣の形態を観察しノニルフェノールがメス化を引き起こすかを検討した結果、投与量に依存した生殖巣のメス化が観察された。この際のメス化の割合はエストラジオール及び合成女性ホルモンであるエチニルエストラジオールよりも低かった。この時の生殖巣の遺伝子発現を調べたところ、女性ホルモン合成経路の最終段階で働く酵素であり本来オスでは発現しないアロマターゼ遺伝子の発現が弱く認められた。以上のことより、ノニルフェノールは胚の成長を全般的に阻害する一方、弱いエストラジオール活性を示し、生殖巣のメス化を引き起こすものと考えられた。
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