2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12760102
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂上 大翼 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (90313080)
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Keywords | マツ材線虫病 / キャビテーション / 表面活性物質 / 蓚酸 |
Research Abstract |
マツ材線虫病の萎凋枯死過程において重要な役割を果たすキャビテーションの原因物質を明らかにするために,マツノザイセンチュウ(以下,線虫)の感染後に低下してキャビテーションの発生を促進すると推測される木部樹液の表面張力,およびいくつかの植物萎凋病の病原体によって産生されてキャビテーションの発生を促進する蓚酸に着目し,線虫接種後のこれらの経時的変化を明らかにするとともに通水阻害の発生との関連について検討を加えた。 線虫を接種したクロマツ苗を経時的に掘り取り,得られた木部の水抽出液についてデュヌーイ表面張力計による表面張力の測定,ガスクロマトグラフィーによる蓚酸の定量を行い,測定した表面張力から表面活性物質量(相対値)を算出した。線虫接種1週間後には通水阻害が観察され,表面活性物質量は対照の10倍程度に,蓚酸量は対照の2倍程度に増加した。また,表面活性物質産生の程度は単なる水分欠乏よりも多かった。以上の結果から,線虫の感染に伴って表面活性物質および蓚酸が産生されることが明らかとなり,これらによってキャビテーションの,発生が促進されるものと考えられた。 一方,クロマツ苗の根から表面活性剤(Tween80)および蓚酸を吸わせ,同様にして表面活性物質量と蓚酸量を測定するとともに酸性フクシン法によって通水阻害を観察したところ,何れの処理によっても通水阻害が引き起こされることが確認された。しかし,表面活性物質を投与した苗で表面活性物質量が著しく高いにも関わらず通水阻害や含水率の低下はさほど大きくなく,一方で,蓚酸の投与によって著しい通水阻害の発生と含水率の低下が認められた。このことから,材線虫病におけるキャビテーション発生は表面活性物質と蓚酸の複合作用によって促進されるものの,蓚酸の方が大きく寄与している可能性が示唆された。
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