2000 Fiscal Year Annual Research Report
消化管機能異常症の病態生理に関する神経内分泌学的検討
Project/Area Number |
12770246
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野津 司 北海道大学, 医学部・附属病院, 助手 (30312367)
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Keywords | 過敏性腸症候群 / barostat / 内臓知覚 / Functional abdominal pain syndrome / corticotropin releasing factor (CRF) / ストレス |
Research Abstract |
健常人の直腸感覚機能について評価するために,barostat systemを整備し,直腸のバルーン伸展プロトコールを決定した.これに基づき,まず健常人の直腸感覚機能を評価し,男女差がないことを明らかにした.直腸感覚はバルーン伸展にともなって生じる痛覚を,閾値圧(痛覚を生じるバルーン内圧)として測定し評価した.次に過敏性腸症候群(IBS)患者5例の直腸感覚機能について検討を進め,基礎状態で60%の患者が直腸の知覚過敏を呈することが明らかになった.また,反復直腸痛覚伸展刺激をconditioningとして行った後,同様に直腸痛覚閾値を測定すると,健常者では基礎状態と比較して変化を認めなかったが,IBS患者では全例で知覚過敏が誘導され,閾値圧が患者全例で異常低値を示した.次にIBS患者と同様に,器質的疾患を認めないのにも関わらず腹痛を来すFunctional abdominal pain syndrome(FAPS)の患者5例で,直腸知覚を評価した.FAPSはIBSと異なり,消化管の機能異常に起因しない慢性の腹痛を来す疾患であり,DSM-IVのpain disorderと呼ばれる疾患と同じで,純粋の精神疾患である.FAPS患者では全例,直腸感覚機能は正常で,conditioningでも知覚過敏は誘導されなかった.以上より,conditioning(直腸反復痛覚伸展刺激ストレス)によって誘導される,直腸痛覚過敏はIBS患者に特異的であり,その病態に深く関わっていると考えられた.現在はこの現象の機序を明らかにするために,ストレスのkey factorであるCRFを被検者に投与して,直腸感覚機能に変化がないかを検討中である.
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Research Products
(1 results)