2000 Fiscal Year Annual Research Report
家族性肥大型心筋症の発症機序に関する検討-変異蛋白の収縮能と組織所見との対比-
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12770365
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
中浦 宏幸 久留米大学, 医学部, 助手 (50279171)
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Keywords | 肥大型心筋症 / 遺伝子異常 / トロポニンT / トロポニンI / リン酸化 / スキンドファイバー / Ca感受性 / 最大張力 |
Research Abstract |
1)肥大型心筋症の心筋トロポニン I(TnI)遺伝子異常については、1997年に6種類の遺伝子変異が報告されており、その中でArg145Glyの変異については、2000年にTakahashiらがCa感受性増加の起こることを報告した。そのため我々は、先に心筋トロポニンT(TnT)遺伝子異常について、同じくCa感受性増加を見い出したが、何故Ca感受性が増加するのか更に追究するため、TnIのリン酸化の影響について機能的解析を中心に検討を行った。 2)ヒト心筋TnTcDNAのクローニングを行い、wild-type TnTとTnT変異遺伝子(Intron15の二つの変異、三つの点変異)を作製し、変異TnTの生理学的検討を心筋レべルで解析した。既存の方法にてウサギスキンドファイバー中でトロポニン3成分の交換除去を行い、次にphosphataseで脱リン酸化したTnIと、PKAでリン酸化したTnIをそれぞれ組み込み、Ca感受性、最大張力、協同性について検討した。その結果、TnIのリン酸化したものも、リン酸化していないものもwild-type TnTと比較して、Ca感受性収縮は有意に亢進していることが明かとなり、いずれのTnT変異遺伝子もTnIのリン酸化には影響しないことが明らかとなった。また、Intron15の二つの変異では、協同性も低下することが明らかとなり、これについてもTnIのリン酸化には影響しなかった。最大張力についてはIntron15のうちTnTΔ28(+7)変異遺伝子では、TnIのリン酸化の影響を強く受けることが明らかとなった。これらの結果から心筋TnT遺伝子異常肥大型心筋症のCa感受性増加は、TnIのリン酸化の影響に関係ないことが明らかとなり、異常心肥大の原因が従来言われて来た収縮力の低下による代償性肥大ではない可能性が推測された。
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