2000 Fiscal Year Annual Research Report
ホルモン耐性前立腺癌における細胞周期制御因子によるアンドロゲン受容体転写調節機構
Project/Area Number |
12770874
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
橋本 良博 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (40244561)
|
Keywords | 前立腺癌 / アンドロゲン受容体 / ステロイド受容体転写共役因子 / 細胞周期制御因子 / サイクリン |
Research Abstract |
細胞周期制御因子は細胞の増殖を正と負に調節する重要な因子である。前立腺癌のホルモン依存性、非依存性増殖にこれらの分子の発現が不可欠であることは言うまでもない。我々は今回の研究で、これらの細胞周期制御因子がアンドロゲン受容体を介した転写調節にどのように作用しているかをin vitroで明らかにした。 1.アンドロゲン受容体を有する細胞に正の細胞周期制御因子(サイクリンA、D、E)とアンドロゲン受容体の転写活性を測定するリポーター遺伝子の発現プラスミドを同時にトランスフェクションした。サイクリンEはアンドロゲン受容体の転写活性を強く活性化したが、サイクリンAは逆に抑制した。また、サイクリンEによるアンドロゲン受容体の転写活性化はサイクリンEの濃度依存性であり、アンドロゲン存在下では約7倍、非存在下では約3倍上昇させた。アンドロゲン非存在化でもサイクリンEがアンドロゲン受容体の転写を活性化することは、サイクリンEが前立腺癌のホルモン抵抗性獲得、ホルモン非依存性増殖に関与する可能性が示唆される。 2.サイクリンEはサイクリン依存性キナーゼ(Cdk2)と複合体を形成し細胞周期を正に調節する。Cdk2との結合領域を変異させた変異体サイクリンEが野生型サイクリンEと同様にアンドロゲン受容体の転写を活性化したことから、サイクリンEのアンドロゲン受容体転写活性はサイクリン依存性キナーゼ非依存性であると思われる。3)アンドロゲン受容体の各種変異体を用いた、免疫沈降法によりサイクリンEのアンドロゲン受容体結合領域はアンドロゲン受容体のアミノ酸配列144から535番目に位置することが確認された。 3.以上の結果から、アンドロゲン受容体に関しては細胞周期制御因子が受容体転写共役因子としても働き前立腺癌の増殖、内分泌療法抵抗性に影響を与える重要な因子であることが示唆される。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] Yoshihiro Hashimoto: "Cyclin E as a coactivator of the androgen receptor"The Journal of Cell Biology. 150・4. 873-880 (2000)
-
[Publications] Hidetoshi Akita: "Induction of KAI-1 expression in metastatic cancer cells by phorbolesters"Cancer Letter. 153・1-2. 79-83 (2000)
-
[Publications] 橋本良博: "アンドロゲン依存性癌細胞増殖における細胞周期制御因子の役割"泌尿器科紀要. 46. 763-767 (2000)
-
[Publications] 橋本良博: "泌尿器科腫瘍学入門 臨床医・研修医のための腫瘍学ガイドブック"日本医学館. 271 (2000)