2000 Fiscal Year Annual Research Report
P.gingivalis線毛による歯周組織細胞のβ1インテグリンの発現調節機構
Project/Area Number |
12771093
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
村上 幸生 明海大学, 歯学部, 助手 (00286014)
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Keywords | P.gingivalis線毛 / フィブロネクチン / 成人性歯周炎 / インテグリン / GCF / サイトカイン / 遺伝子発現 / 情報伝達 |
Research Abstract |
私は以前、細胞外マトリックスの一つであるフィブロネタチン(FN)が成人性歯周炎の病原性細菌であるPorphyromonas gingivalisの線毛結合蛋白質の一つで、唾液中のFNが成人性歯周炎のnegativeな調節因子として機能していることの可能性について報告した。一方、β1インテグリンの一つであるlntegrinα5/β1(Very Late Antigen5)はFNレセプターとして機能していることが知られている。最近、LPSによるmonocyteのVLA5の早期発現誘導作用が報告されたことから、本菌の感染が歯周組織細胞のVLA5を増加させる可能性が考えられ、FNの本疾患へのnegaiveな調節作用に関与している可能性が示唆された。しかしながら、本菌線毛による歯周組織細胞のFNならびにVLA5の発現調節と成人性歯周炎の病態との関連性についての知見は得られていないため、私はこの点について検討した。 歯肉溝液は本学付属病院を受診した成人患者より回収した。臨床的検査はAttachmentlossを用いた。まず私はVLA5のリガンドであるFN量を指標にして、局所歯肉溝での動態を調査した。その結果、FN量は健常者に比較して中等度歯周炎では高値であったが、高度歯周炎で低下していた。本線毛モノクロナール抗体を使用して患者歯肉溝液中の本線毛抗原量を測定したところ、歯周炎の進行度に相関して増加していた。この結果は本線毛が局所においてFNの産生調節に関与していることを示唆した。ゆえに、ヒト歯肉線維芽細胞を使用したin vitroの実験で本線毛のFN産生刺激作用を検索したところ、少量の線毛で促進され、高濃度線毛で減少した。この少量の線毛によるFN産生促進効果はPKCあるいはPTKの情報伝達系を経由して引き起こされていた。数種のサイトカインはFNを発現誘導させるとFN受容体もupregulateされることから、本線毛でも同様ではないかと考えWestern-blot法を用いて検索したところ、本線毛はVLA5発現をFNの場合と同様に調節していた。これらの結果は本菌による成人性歯周炎の発症機構の一つに局所のFN産生調節とその受容体であるβ1インテグリンが機能的役割を演じている可能性を示唆した。
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