Research Abstract |
矯正ブラケット材を想定した純Tiの摩耗挙動を調査した.CPTiを0.5mm厚の板状に切断し,平行研磨機で粒径0.3μmのアルミナ粉まで研磨,鏡面にしたものを被摩耗材)とした.摩耗試験機はレスカ製FPR-2000Sで,ボールオンまたはピンオンディスク形式で行った.摩耗材はZrO_2とステンレス鋼(SUJ2)とした.摩擦摩耗試験は乾式,室温中で行った.試験条件は,回転半径1mm,回転速度95.5rpm(線速度1.0cm/s),試験時間は3.6ksで行った. 最初に,Tiの摩耗に対する摩耗材の影響を調査した.荷重は100gとした.その結果,SUJ2の定常摩耗時の平均動摩擦係数は0.75,ZrO_2のそれは0.7であり,金属同士の摩耗の方がセラミック-金属の摩擦より高い摩擦係数を示す.また,試験後の摩擦表面を光学顕微鏡で観察すると,SUJ2では茶色い摩耗粉が発生していた.ピン自体も摩耗していたため,この摩耗粉はピンの摩耗による酸化鉄と考えられる.また,Ti表面に茶色の酸化物の凝着が見られた.一方,ZrO_2の場合,Ti摩耗表面は黒くなり,はがれが見られた.また,ZrO_2側に僅かに黒い摩耗粉が付着していた.この場合,Tiの硬さがZrO_2に比べ小さいため,一方的にTiが削られ,Ti酸化物が摩耗粉として発生したと考えられる. 続いて,摩擦係数及び摩擦力への荷重の影響を調査した.この試験はTi-ZrO_2で行った.試験加重を100g,200g,300g,500gと変化させ,摩擦係数の変化を測定した.摩擦力は,荷重の増加に伴い増加するが,平均動摩擦係数は100g-300gまでは0.7で,ほぼ一定の値であったが,荷重500gになると,0.5と小さくなった.これは,摩擦の機構が荷重増加に伴い変化した事を示唆している. 以上の予備試験の結果,当初予定していたワイヤ用の摩耗装置改良を行わなくても,充分な実験結果が得られることが判った.その為,今後もピンオン,ボールオンディスク方式で摩擦摩耗試験を行い,今後はTi-Nb-Al合金,SUS316の摩擦摩耗試験を湿式で行い,TEMによる表面の微細組織観察を行う予定である.
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