Research Abstract |
歯垢の齲蝕誘発能における口腔内部位特異性を調べるために,上顎前歯部唇側(UAB)と口蓋側(UAL),上顎臼歯部頬側(UPB)と口蓋側(UPL),下顎前歯部唇側(LAB)と舌側(LAL),下顎臼歯部頬側(LPB)と舌側(LPL)の左右両側を合わせた8部位から採取した歯垢中のCa,P,F量を測定し,ミネラル量の部位の差の有無について比較検討した。また,部位別歯垢蓄積量,水分量についても調べ,以下に示す結果を得た。 1,歯垢蓄積量は,湿・乾燥重量ともに,UPBが最も多く,UALが最も少なかった。 2,歯垢の水分量は,UAL以外は,80%前後とほぼ一定の値を示した。 3,歯垢中のCa,P量はともに危険率0.01%で部位の差が認められ,LALが最も高い値を示した。次いで,LPL,UPBとなり,最も低い部位はLPBであった。一方,F量については,危険率5%で部位の差が認められ,CaやP量と同様に,LALが最も高く,LPBが最も低い値を示した。これらの結果は,齲蝕は下顎前歯部に少なく,上顎前歯部唇面や下顎臼歯部頬側面に多発するという齲蝕罹患の部位特異性と一致していた。また,大唾液腺開口部付近(上顎第一大臼歯頬側面,下顎中切歯舌側面)ではエナメル質表層のF濃度が高いという歯表面のF濃度分布とも類似した傾向を示したことから,歯垢中のミネラル分布において,唾液および歯質表層との相互の関連性が認められた。
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