2000 Fiscal Year Annual Research Report
歯周病原性菌由来プロテアーゼによる歯周組織細胞の免疫応答
Project/Area Number |
12771335
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
森 真理 北海道医療大学, 歯学部, 助手 (30275490)
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Keywords | Porphyromonas gingivaris / gingipain-R / IL-8 / Human gingival fibroblasts |
Research Abstract |
目的 歯周炎の病因は主に細菌の感染であり,感受性のある宿主において歯周炎に関係する細菌により発症し進行する。Porphyromonas gingivalisは有力な歯周病原性細菌であり,産生される蛋白分解酵素(プロテアーゼ)は,歯周病の進展に重要な因子であることが明らかにされている。本年度は,宿主の免疫応答に対し,P.gingivalisの病原因子がどのように影響を及ぼすかについて明らかにするために,T細胞と接触した歯肉線維芽細胞(HGF)の応答性におけるP.gingivalis由来arginine specific cysteine protease(gingipain-R)の影響について検討した。方法 P.gingivalis381株を培養し,gingipain-Rを精製した。ヒト末梢血Tリンパ球(PBTL)を10%FCSを含むRPMI1640培地にて培養し,細胞からT細胞膜画分を調製した。健康なヒト歯肉より得た線維芽細胞は10%FCSを含むDMEM培地にて継代培養し,実験に供した。ケモカイン量はELISA kitを用い測定した。mRNAの発現はRNase protection assayおよびNorthern blot法で確認した。 結果・考察 培養上清中のIL-8量は,gingipain-Rで刺激したHGFとコントロールとの間に有意差は認められなかったが,gingipain-Rで刺激したHGFではIL-8のmRNA,および細胞内のIL-8量が増加した。またHGFをgingipain-Rの存在下で培養した後,さらにT細胞膜画分で刺激すると,時間,濃度依存的にIL-8産生とIL-8mRNAの発現が増加した。さらにT細胞膜画分によるHGFのケモカイン産生はgingipainの前処理により,IP-10では抑制され,MCP-1は影響を受けなかった。 結論 gingipain-Rは,HGFに対し直接的にIL-8産生を増加させたが,T細胞膜画分による刺激後のIP-10産生は抑制した。以上の結果より,gingipain-Rは,歯周炎局所への炎症性細胞の浸潤において多様な役割を持ち,歯周炎の病態に深くかかわっていることが示唆された。しかし,そのメカニズムについては依然不明な点が多く,今後それぞれの応答がどのような情報伝達系を介して起こっているのかを詳細に分析することが次年度の課題である。
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[Publications] M Oido-Mori,C Chizzolini,R Rezzonico,Y Kowashi,JM Dayer and P Baehni: "PORPHYROMONAS GINGIVALIS CYSTEINE PROTEASE(GINGIPAIN) MODULATES CHEMOKINE PRODUCTION OF HUMAN GINGIVAL FIBROBLASTS."Journal of Clinical Periodontology. 27. 104 (2000)
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[Publications] 森真理,池田雅美,王宝禮,大浦清,藤井健男,中島啓介,小鷲悠典: "ヒト歯肉線維芽細胞のケモカイン産生におけるPorphyromonas gingivalis cysteine proteaseの影響"日本歯周病学会誌. 42. 130 (2000)