2000 Fiscal Year Annual Research Report
スティグマを伴う疾患・障害をもつ人の就労と社会参加に関する研究
Project/Area Number |
12780077
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
若林 チヒロ 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 助手 (40315718)
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Keywords | 生活 / スティグマ / 就労 / 社会参加 / 障害者 / 患者 / HIV感染者 / エイズ |
Research Abstract |
疾患や障害は、一時的な療養生活をもって治癒・回復するとは限らず、生涯その疾患・障害をもち、療養しつつ日常生活を送る人も多い。そして彼らの生活の質(QOL)は、その疾患・障害が社会でどのように意味付けられているかに左右され、とくに感染症や遺伝病のように否定的な意味付けがされやすい場合には、社会的に不利な状況におかれやすい。本研究は、HIV感染者を対象に、その疾患・障害をもつ意味を社会生活の実態に基づいて検討しようとするものである。 本研究では、初年度はまず日本のHIV感染者の生活を構造化して把握することを目的とし、申請者らが行ってきた調査結果等の分析および、関係者への聞きとりを行った。結果、たとえば就労について言えば、20〜40歳代といった若年層が多いにもかかわらず、薬害HIV感染者の場合には就労率が低く、その背景には、病名を告げることで差別を受けるのではないかという不安がみられた。職場等で病名を告げることができないため、通院や服薬といった健康管理、職場の配置転換に配慮を頼めないといった働きにくさを感じていることが明らかになった。 また、新興の疾患の場合、治療法の進歩によって社会の見方や対応にも変化が生じる。HIVの場合も発症を遅らせる薬が多く開発されたことで、患者のエイズ発症率は低下し、HIV感染者は、根本的な治療法はないものの生き伸びる希望を現実のものとしていた。このことで、家庭生活、職業生活、余暇生活といった生活の諸側面において建て直しを求められているが、HIV感染症が社会的にスティグマを伴いやすい疾患であり、周囲に病名を告げることで差別を受ける不安感があるという状況に改善はみられておらず、生活の建て直しの障害となっていた。NGOや医療機関においても、治療薬や症状への対処といった医療面での支援だけでなく生活支援が求められていた。
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