2000 Fiscal Year Annual Research Report
環境資源の仮想評価法(CVM)の評価バイアス問題に関する理論的・実証的研究
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12780430
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
鄭 躍軍 統計数理研究所, 領域統計研究系, 助手 (80280527)
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Keywords | CVM / 環境の経済評価法 / CVMのバイアス / 仮想市場の設定バイアス / 支払手段バイアス / 二項選択式CVM / ダブルバウンド二項選択式 |
Research Abstract |
仮想評価法(Contingent Valuation Method:CVM)は環境資源の利用価値と非利用価値をともに評価できる数少ない表明選好法の一つとしてもっとも注目を集めている。しかし、CVMにおける非標本抽出バイアスが評価結果に大きな影響を及ぼすことが指摘されている。したがって、戦略的バイアス、仮想市場の設定バイアス、付値方式バイアスと支払手段バイアスの発生メカニズムを統計学的観点から総合的に解明することが、CVMの信頼性を高める一つの鍵となっている。そこで、本研究ではCVMの評価バイアスならびにその解決策を理論的・実証的に研究することを続けてきた。 2年計画の1年目には、仮想市場の設定バイアスと支払手段バイアスが、CVMの信頼性にどのような影響を与えるかを理論的に分析した上で、実証的な考察を行うために、東京湾防波堤内側埋立地の環境価値について仮想評価法で評価を遂行した。サンプリング調査データに基づき、仮想市場の設定バイアスと支払手段バイアスのメカニズムを総合的に考察している。 本研究では、東京湾奥ウォーターフロントに立地する「中央防波堤内側埋立地」の東側約80haについて、「海上森林公園」を造成するという都の方針を巡ってサンプリング調査を2001年1月より実施した。「中央防波堤内側埋立地」は、総面積188ha。うち78haが、1973〜86年の14年間に東京23区から出される家庭ゴミによって埋め立てられ、埋め立てにはゴミ層と覆土層を交互に積み重ねる「サンドイッチ工法」が採用された。本研究ではこのゴミ処分場埋立地に「海上森林」を造成することを想定し、その環境価値を評価した。本研究では、「中央防波堤内側埋立地」に関わりのある東京都23区のうち、まず8区を抽出して、各区の住民基本台帳より約800人に一人の割合でサンプル個人を無作為に抽出する作業を行った。このサンプリングによって抽出した2,649サンプル個人を仮想評価法の被調査対象とした。 「中央防波堤内側埋立地」において、「海上森林公園」をつくる事業への賛否を質問した。さらに、上の質間で「賛成」を表明した場合、海上森林公園造成の初期段階、植栽基盤整備のための資金に対する、支払意志額をダブルバウンド二項選択方式により質問した。支払手段については、「海上森林造成基金への募金」と「税金による海上森林造成」の2つのシナリオで調査票を作成し、サンプル個人全体に郵送調査法で調査を行った。 調査データを統計的に解析し、仮想市場の設定バイアスと支払手段各種バイアス問題を検証した結果、ダブルバウンド二項選択方式による支払意志額(WTP)の推測値は、シングルバウンド二項選択方式より大きいことと、「基金」と「税金」の支払手段によるWTPには顕著な差があることを明らかにした。関連するバイアス問題の解決策を探ることは今後の重要な課題の一つである。
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