2003 Fiscal Year Annual Research Report
実験的脊髄損傷モデルにおける脊髄および交感神経活動電位の電気生理学的研究
Project/Area Number |
12832042
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
荒巻 駿三 京都府立医科大学, 医学研究科, 講師 (10151169)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小倉 卓 京都府立医科大学, 医学研究科, 助手 (20254336)
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Keywords | 脊髄損傷 / 治療的電気刺激 / 筋交感神経活動 / 微小神経電図法 |
Research Abstract |
【目的】脊髄不全損傷は痛みやしびれの訴えが続く場合が多く生活を阻害する要因となる。我々は髄節神経レベルの中でも自律神経の機能が維持されることでこれらの問題が改善されると考え、脊髄不全損傷モデルに治療的電気刺激(TES)を実施し末梢交感神経機能の維持を試み、末梢筋交感神経活動(MSA)に対するTESの影響を調べる。 【対象・方法】Wistar系ラット雄18匹。麻酔後、第9胸椎椎弓を切除し、10g/mm^2の強度で10分間の圧迫により脊髄不全損傷モデルを作製し、TESを右腓腹筋に行った。微小神経電図法を用い左右の坐骨神経から圧迫後1,2,3,4,8,週目にMSAの電位を記録し、積分値を求め経時的に比較検討した。 【結果】実験群の右側では圧迫後1週と8週、3週と8週の間で有意に8週後のMSA積分値に増加を認めた。また実験群とコントロール群の比較においては圧迫後4週以後で有意に実験群のMSAの積分値が大きかった。 【考察】脊髄圧迫後のラットにおいてTES実験群のTES側(右側)で有意にMSAの回復が認められた。これは、電気刺激に伴う筋収縮により筋感覚が増加することが1つの要因と考えられる。節後交感神経線維はこの筋感覚の感度を調節するために交感神経節から後根神経節に連絡している。TESによって末梢神経の連絡により交感神経の自発活動が促されていると考えられる。交感神経節前線維においては中枢との連絡が断たれても、血管系支配の交感神経節前線維の自発活動は数週間で回復してくるといわれている。今回の結果はこの回復がTESにより促進されたと推察する。脊髄切断後には運動ニューロンにノルアドレナリンに対する除神経性過敏が出現するとされている。このことは筋のspasticityの出現に関与し、TESによる筋収縮は筋感覚の増感、そして、感度調節による交感神経活動の促通と連鎖して末梢交感神経の機能維持につながるものと考える。Donovanは脊髄損傷の異常疼痛を髄節神経性、脊髄性、筋緊張性などに分類している今回のTESの結果はこれらの異常感覚に効果を発揮できる可能性があると推察する。
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Research Products
(15 results)
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[Publications] Shunzo Aramaki: "The experimental study on peripheral autonomic nerve potential of the spinal cord injury model by microneurogram method"The 1st World Congress of the Int.Soc.Of Physical and Rehabilitation Medicine.. 1号. 579-587 (2001)
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[Publications] 李国浩: "脊髄損傷モデルにおける末梢自立神経の変化に関する実験的研"脊髄電気診断学. 22巻・1巻. 88-91 (2001)
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[Publications] Yasuhiko Kira: "Sympathetic skin response evoked by respiratory stimulation as a measure of sympathetic function"Clinical Neurophysiology. 112巻. 861-865 (2001)
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[Publications] 李国浩: "脊髄損傷モデルにおける下肢末梢交感神経活動電位に関する実験的研究"中部日本整形外科災害外科学会雑誌. 44巻・2号. 309-310 (2001)
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[Publications] Shunzo Aramaki: "The experimental study on peripheral sympathetic nerve activity of lower limbs using therapeutic electrical stimulation"Neurological Rehabilitation Proceedings of the 3^<rd> World Cingress. 10巻・1号. 343-348 (2002)
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[Publications] Taku Ogura: "Power Spectrum Analysis of Compound Muscle Action Potential in Carpal Tunnel Syndrome Patients"Journal of Orthopaedic Surgery. 10巻・1号. 67-71 (2002)
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[Publications] 吉良保彦: "脊髄損傷モデルにおける末梢交感神経活動電位に関する実験的研究"脊髄電気診断学. 23巻・1号. 23-31 (2002)
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[Publications] 中西文彦: "治療的電気刺激を用いた下肢末梢交感神経活動電位に関する実験的研究"脊髄電気診断学. 23巻・1号. 32-37 (2002)
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[Publications] Shunzo Aramaki: "Correlation between central and peripheral sympathetic nerve activities on the spinal cord injury model by compression"The Association of Academic Physiatrists 39th annual meeting. 39巻. 26-29 (2003)
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[Publications] Taku Ogura: "The relationship between nerve conduction a study and clinical grading of carpal tunnel"Journal of Orthopaedic Surgery. 11巻・2号. 190-193 (2003)
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[Publications] 吉良保彦: "橋・延髄部の交感神経pre-motor nucleiに関する電気生理学的研究"脊髄機能診断学. 24巻・1号. 19-25 (2003)
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[Publications] 小倉卓: "橋・延髄部の交感神経自発活動に関する神経生理学的研究"脊髄機能診断学. 24巻・1号. 26-33 (2003)
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[Publications] 李国浩: "治療的電気刺激による末消交感神経への作用機序に関する基礎的研究"脊髄機能診断学. 24巻・1号. 45-49 (2003)
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[Publications] 吉良保彦: "吻側延髄外側野における交感神経自発活動の電気生理学的研究"脊髄機能診断学. 25巻・1号. 76-84 (2004)
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[Publications] 島村崇: "脊髄圧迫モデルによる交感神経活動"脊髄機能診断学. 25巻・1号. 32-40 (2004)