2000 Fiscal Year Annual Research Report
仮想空間での視覚的変化の見落としに及ぼす身体変動の効果に関する認知心理学的研究
Project/Area Number |
12871012
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横澤 一彦 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (20311649)
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Keywords | 身体運動 / ヘッドマウントディスプレイ / 視点依存効果 / ジオン |
Research Abstract |
様々な視点から、または身体運動に伴って物体を観察すると,見えが変化する。同一の3次元物体を継時提示した場合に,刺激間の見えが異なるときは,同じであるときよりも,同定判断時間が長くなることが報告されており、この認知的コストは"視点依存効果"と呼ばれている。本研究では,ヘッドマウントディスプレイを使用することにより,運動物体を頭部回転によって随従する状況を設定し,物体認知が視点依存かどうかを検討した。ヘッドマウントディスプレイは,頭部に装着するモニタ装置なので,頭部の向きに関わらず刺激を観察することができる。刺激物体として,ジオンと日常物体の両方を用いて検討した。実験状況として,運動物体が被験者の前を水平方向に通過する。第1物体の消失後,2秒間のブランクの間に頭部を反対方向に回転させ,第2物体を観察させた。統制条件として,第1物体と第2物体を頭部を固定して観察する条件を設定した。第1物体と第2物体が同じ物体かどうかを判断させ,反応時間が測定した。結果は,観察方向固定条件で視点依存効果が見られたが,観察方向変化条件では見られなかった。この結果は,ジオンと日常物体の両刺激で共通であった。したがって,運動物体を頭部回転によって随従する場合に,物体認知が視点非依存であることが示唆された。また,第1物体を静止刺激として提示した実験も行った。結果は,観察方向固定条件と観察方向変化条件の両方において,視点依存効果が見られた。この結果は,ジオンと日常物体の両方において,共通であった。したがって,視点依存効果を消失させるためには,観察方向の変化だけでは不十分で,運動物体を随従することが必要であることが示された。身体運動の情報が加わることで認知的処理が促進されることが示唆された。恐らく,前庭や自己受容器からの情報が,記憶表象に対する心的回転の処理を促進したのではないかと考察することができる。
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Research Products
(1 results)