2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12F02005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
保谷 徹 東京大学, 史料編纂所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
彭 浩 東京大学, 史料編纂所, 外国人特別研究員
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Keywords | 档案 / 奏摺 / 題本 / 通商 / 額商 / 官商 / 信牌 / 銅 |
Research Abstract |
(1)史料収集とデータベースの構築。次の4つのステップに分けて、梢案の収集を行った。(1)東京大学所蔵の既出版の梢案史料集、(2)筑波大学附属図書館所蔵のマイクロフィルム「内閣漢文題本戸科貨幣類」、(3)北京の第一歴史梢案館所蔵の朱批奏摺・録副奏摺・戸科題本・内務府奏案、(4)台北の国立故宮博物院所蔵の奏摺類档案。本研究の基礎作業として、清朝の日本銅調達に関する梢案史料のデータベースを作り始めている。 (2)額商成立の再検討。収集してきた梢案史料に基づき、論文「18世紀日清貿易における中国商人の組織化-額商の成立と貿易独占を中心に-」を作成した(「13.研究発表」欄を参照)。その内容を要約すれば、次のようなものとなる。18世紀半ば頃に、官許を得て、決められた人数で民間商人の対日貿易を一手に引き受ける商人組織が現れ、それらの商人は額商と呼ばれていた。これまでは、額商成立の時期については諸説が並立しており、成立の原因については清政府の指示によるものという曖昧な解釈しかなされていなかった。これらの問題は、先学が主に『清朝文献通考』などの、政府側の編纂史料に依拠したことによるものと考えられる。この論文では、新発見の梢案史料を利用し、先学が史料を誤読した箇所を訂正し、額商の成立を乾隆20年とし、また成立の原因については、商人内部の経営統合の動きと清政府の銅調達統制の政策指針との共同作用によるものという新説を提示した。 (3)その他の研究成果。商人研究の延長線上、信牌システム論の構築も進めることができた(「13.研究発表」欄を参照)。ドイツで出版された英文の論文集に寄稿し、新史料を加えて、日清双方の信牌利用を軸とした信牌システムの成立過程を整理した。また、バンコクで開催されたアジア未来会議で、パネルを組織し、古代史・中世史の若手研究者と共に、前近代東アジア国際貿易の管理システムについて議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)史料収集の作業は予定通り行った。去年11月に北京の第一歴史梢案館、今年3月に台北の故宮博物館に足を運び、清政府の日本銅調達を中心とした、日中関係に関する梢案史料を収集してきた。(2)梢案史料に基づく研究も順調に進めている。本研究の中心課題は、18世紀長崎貿易における中国商人の組織化である。商人の組織化とは、額商を中心とした商人集団と、官商が率いる商人集団の成立を指している。「9.研究実績の概要」で述べた通り、額商成立の時期及び理由については通説を覆す研究成果を得た。一方、官商の成立についても、新しい事実を確認できるいくつかの新史料を見つけた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)引き続き日本関係の梢案史料を収集し、そして日本銅だけでなく、人参・織物の貿易に関する史料も視野に入れる。(2)今年3月に台北の故宮博物院で複写した史料を整理し、銅調達関係の史料を抽出してデータベースを充実する。(3)新発見の官商に関する史料を研究に活用し、官商の成立に関する論文を作成する。(4)先行研究の成果を踏まえ、本研究で発見した事実を加えて、官局(官商が率いる商人集団)・民局(額商を中心とした商人集団)の経営形態を図式で示す。(5)もと計画した商人集団の比較研究を棚上げし、両局の成立による長崎貿易への影響という課題を優先的に取り上げたい。この課題が近世日清通商関係の枠組みという本研究の根本的な問題意識に深く関わり、そして関連する史料の発見によりその研究を進める環境も整えられている。
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Research Products
(4 results)