2012 Fiscal Year Annual Research Report
マクロファージの機能特性に基づいた胆管線維症の病理発生の解明と治療戦術
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12F02095
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
山手 丈至 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HOSSAINMD. Golbar 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 胆管線維症 / ラット / マクロファージ / 筋線維芽細胞 / α-naphthylisothiocyanate / CD68 / 細胞骨格 |
Research Abstract |
胆管線維症は、中毒、感染症、自己免疫性、あるいは特発性などの様々な原因により惹起される胆管上皮細胞の傷害に続発する進行性の慢性増殖性炎とされ、増悪すれば肝硬変に至る。今年度は、ラットの正常肝の発生過程と薬物誘発性の急性胆管線維症モデルを用いてマクロファージの多様性に焦点を当て、その病理発生機序の解明を試みた。 1.ラット肝発生に伴うマクロファージの動態:背景データを確立する目的で、発生過程の肝における正常なマクロファージの分布動態を解析した。その結果胎子では貧食活性の高いCD68マクロファージが、新生子から成体では抗原提示(MHC II発現)マクロファージが出現すること、また肝常在マクロファージであるCD163クッパー細胞は生後に現れ始め、肝組織構築に係わるとともに脂質活性と関連するCD204抗原を発現することが分かった。さらに、MHC II発現マクロファージはグリソン鞘に主座し、間質樹状細胞として抗原提示能を有すること、そしてCD163とCD204発現マクロファージは類洞に沿って出現するクッパー細胞として恒常性に関与することを明らかにした。 2.急性の胆管線維症のラットモデルの病態解析:胆管を傷害するα-naphthylisothiocyanate(ANIT)をラットに単回投与し、急性の線維化モデルを作出し、12日間に亘り病態の推移を解析した。その結果、MHC II発現マクロファージは初期から後期まで常に増加し、それに続いてCD68とCD204発現マクロファージがやや遅れて増加し始めることが分かった。筋線維芽細胞は、ビメンチンとデスミンを基本的に発現するが、線維化が進行するとα-SMAを発現するようになった。さらに、MCP-1はマクロファージの出現と、TGF-β1はα-SMA陽性の筋線維芽細胞の誘導と関連することが分かった。なお、Th1とTh2のリンパ球の出現を解析したが、有意な出現は見られなかった。 3.胆管線維症の急性モデルを用いたマクロファージ機能抑制効果の検討:マクロファージ機能を抑制するクロドロネートを投与し、肝固有のマクロファージ(クッパー細胞)が約1週間継続して消失することが分かった。この病態は、現在さらに解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、多彩な機能を有するマクロファージの機能特性に注目し、胆管線維症モデルを用いて、その病理発生をin vivoとin vitroで解析することを目的とする。In vitroの実験のデータがまだ得られていない点を除けば、おおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
マクロファージの機能特性に基づいた胆管線維症の軽減効果をin vivoとin vitroで解析することを予定している。 特に、マクロファージ機能を抑制するクロドロネートを胆管線維症モデルに投与し、以下の解析を進める。 1.マクロファージの出現状況と機能特性の解明:どのような機能を有するマクロファージが抑制されるのかを、胆管線維化の軽減効果との関連で、免疫組織化学的に追究する。 2.胆管線維症に係わる筋線維芽細胞の特性解明:筋線維芽細胞はコラーゲンを過剰に産生することで胆管線維症などの線維化を促進する。そこで、慢性モデルを用いて筋線維芽細胞に発現する細胞骨格(ビメンチン、デスミン、α-SMA)を免疫組織化学的に解析する。また、出現するマクロファージの種類との相関も追究する。 3.ラットマクロファージHS-P株を用いた線維原性因子の解析:HS-P株を用いて、胆管線維化部位に出現するマクロファージの機能発現と抑制因子との関連をin vitroで解明する。
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Research Products
(3 results)