2012 Fiscal Year Annual Research Report
生物の重金属除去能力を活用した環境汚染の修復および防止技術の開発
Project/Area Number |
12F02373
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
遠藤 銀朗 東北学院大学, 工学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
OYETIBO Ganiyu 東北学院大学, 工学部, 外国人特別研究員
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Keywords | 重金属汚染 / 石油汚染 / 重金属耐性微生物 / 水銀除去能 / 水銀還元気化細菌 / 水銀吸着酵母 / 石油系炭化水素分解 |
Research Abstract |
環境保全のために十分な投資ができない開発途上国においては、できるだけ費用対効果に優れかつエネルギー消費を伴わない環境保全技術が求められている。本研究では、研究代表者である遠藤と研究分担者である外国人特別研究員のOyetiboが共同して探索した重金属耐性微生物を用いて、水銀耐性をもたらす分子遺伝学的特徴と水銀の生物学的除去機構を解明し、それによって得られる基礎情報を環境の水銀汚染の浄化に活用することを目的としている。平成24年度の研究においては、単離できた44株の重金属耐性微生物の16S rRNA遺伝子および18S rRNA遺伝子の塩基配列を決定することによって、これらの生物種を同定した。これらのうち12株はFermicutes門のグラム陽性細菌であり、水銀を還元し気化する高い能力を有していた。現在、これらの細菌の水銀耐性遺伝子群に注目して解析を行っているが、その結果はまだ得られていない。単離できた42株の水銀耐性微生物のうちの2株は細菌ではなく酵母であることが判明したことから、酵母細胞表層への水銀の吸着による除去に焦点を当てて塩化第二水銀を用いた吸着実験を行い、それら酵母による水銀除去能について解析を行った。この実験の結果から、単離された水銀耐性酵母は高い水銀吸着能力を有していることが確認できた。また、上記の微生物はいずれも石油汚染が同時に見られる沼地底泥試料から単離したものであることから、それらの2株について石油系炭化水素とその代表成分であるフェナントレンの分解能を調べた。その結果、ある特定の細菌が水銀耐性を有すると同時に石油系炭化水素を分解できることが確認できた。したがって、単離できた微生物株のいくつかは重金属と石油系炭化水素による複合汚染のバイオレメディエーションにも適用できることが知られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従って、単離できた水銀耐性微生物の16SrRNA遺伝子および18SrRNA遺伝子の塩基配列を決定することによって、これらの生物種を同定することを完了した。また、新しい情報として、水銀耐性細菌による水銀雄還元気化能力および水銀耐性酵母の水銀吸着除去能力についても確認することができた。ただし、これらの細菌の水銀耐性遺伝子群については、その解析結果を得るには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究においては、水銀浄化遺伝子群の微生物種間転移現象を環境生物工学的に活用する新技術の開発を行うために、物理的技術や化学的技術に比べてコストの掛からない方法として、水銀還元気化細菌を固定化して用いるバイオリアクターによる重金属除去プロセスを開発する計画であったが、水銀吸着酵母を新たに発見できたことから、これらの酵母を固定化せずに用いるバイオリアクターの開発も課題に加えることに研究計画を変更する。平成25年度においては、単離した水銀耐性細菌による水銀イオン還元などの水銀代謝機構の分子生物学的解明も行う。また、鉱業活動等によって人為的に環境に放出された金属水銀は、微生物によって水銀イオンに酸化され、さらに水銀イオンが微生物によってメチル水銀等に変換されることによって生態系の食物連鎖において生体濃縮されると考えられているが、この微生物による水銀変換系についても解明する方向で今後の研究を推進する。
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Research Products
(1 results)