2012 Fiscal Year Annual Research Report
侵出性ホヤの進化を明らかにするための遺伝子型と表現型の研究
Project/Area Number |
12F02722
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
齊藤 康典 筑波大学, 生命環境系, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SMITH KirstyF. 筑波大学, 生命環境系, 外国人特別研究員
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Keywords | 侵出性ホヤ / Didemnum vexillum / 分布 / 遺伝子型 / 表現型 / ミトコンドリアDNA / 進化 |
Research Abstract |
平成24年10月末に、研究分担者が赴任し、研究を開始したため、研究のめざましい成果は出ていない。対象とするホヤのDidemnum vexillumは東北地方の南三陸地方に多く生息することが、今までの研究から明らかとなっているが、南三陸地方は一昨年の大地震からの復旧がまだで、宿泊や交通の便が悪いことから、D. vexillumの群体の採集場所を別に求めることとした。3年前に調査した時に、三浦半島、伊豆半島、志摩半島周辺で、D. vexillumの同種或いは同属の群体を採集したので、今回は、このホヤの日本における分布域を調べると共に遺伝子実験のための材料を採集することを目的として、海水温が三陸地方よりかなり高い近畿・四国地方の紀伊白浜と高知・浦ノ内湾でD. vexillumの群体の分布調査と採集を行った。紀伊白浜では、京都大学フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所を拠点にして、実験所の教職員の助けを借りて周辺漁港や磯の調査をした。また、高知・浦ノ内湾沿岸では、高知大学総合センター海洋生物研究教育施設を拠点にして、高知大学理学部の教職員の助けを借りて湾内に係留してある筏や生け簀を調査した。調査の結果、両地域でD. vexillumによく似た群体を多数採集することが出来た。特に高知・浦ノ内湾では高密度の分布が認められた。これら地域で採集した群体は伊豆下田の筑波大学下田臨海実験センターに持ち帰り、形態の詳細な観察を行うと共に、境在、屋外水槽で飼育をして群体を大きく成長させる試みをしている。それと平行して、DNAの抽出法の改良も試みている。D. vexillumの群体は、被嚢中に炭酸カルシウムの骨片を多数持ち、これらがDNA抽出の妨げになっており、最も効率の良いDNA抽出方法を得るための予備実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究分担者がニュージーランドより赴任してから5ヶ月であるが、当初の2ヶ月ほどは、日本の生活に慣れるのが大変で、研究に使われる時間が足りなかった。実質3ヶ月で、紀伊白浜や高知浦ノ内湾での対象とするホヤの分布調査・採集を行い、それらの群体の飼育実験やミトコンドリアDNAの単離などに着手したので、ほぼ予定した通りであると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、三陸沿岸、浦ノ内湾沿岸、紀伊白浜沿岸でのDidemnum vexillum群体採集と、さらに複数の箇所での分布調査と採集を行い、そして、それら群体の内陸飼育のシステムを確立し、形態や生活史について各地域間での比較のため詳細な調査をする。また、ミトコンドリアDNAのCO1の領域などを用いて、各地域の集団問での遺伝的な関係を明らかにする。そして、世界各地から得られたそれらのデータと比較し、日本のどの地域から世界中に侵出していったのか解明するための手がかりを見つける。
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