2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J00069
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
木村 涼 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 七代目市川團十郎 / 八代目市川團十郎 / 信州川路興行 / 上方興行 / 木戸番 |
Research Abstract |
本年度はまず、七代目團十郎が興行に訪れた地域を各々の『自治体史』と演劇博物館所蔵の役者評判記や芝居番付などで確認し、名古屋市蓬左文庫、山梨県立博物館、京都府立総合資料館で、芝居番付や評判記、『御用留』などの複写・収集に務めた。 また、一昨年から調査をはじめていた七代目の信州飯田川路興行については、その全貌を解明するためまず、長野県立歴史館において関連資料の複写・収集に務めた。次に、当地関島家所蔵の七代目團十郎関係資料が早稲田大学演劇博物館へ寄贈・寄託されたので、それらを撮影し、目録を作成した。これら資料群の中には、役者や上演演目に関する資料だけではなく、その地域で芝居を支える裏方の人々に関する資料も存在した。地方の裏方について検討する前に江戸における芝居掛り合いの者について検討を加え、「江戸三座における木戸番の存在形態」と題する論文を刊行した。また、太田記念美術館浮世絵研究助成金受賞の成果報告として「八代目市川團十郎と死絵」と題する論文を太田記念美術館の紀要に寄稿した。八代目は七代目の長男なので死絵にも七代目との関係が色濃く出ており、七代目の生涯を見渡す時、八代目との関係性をみることは重要である。 七代目の地方興行調査の過程で、静岡県富士市の伊達家において七代目團十郎及びその家族から送られた書簡70通余りを発見した。市川團十郎家と伊達家との交流は、目を患っていた七代目が伊達家六代目当主であり眼科医でもある伊達本益に治療してもらったことからはじまり、しだいに家族ぐるみのつきあいへと発展していったことが知れた。また、70通ほどの書簡類を全て撮影し、書簡類の概要の把握に努めた。これらの書簡類の発見は、七代目からの一部を除きこれまで非公開の上、七代目だけではなく妻や愛妾、息子からのものもあり、大変貴重で七代目の家族関係が知れるということに意義がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
静岡県富士市の伊達家に所蔵されている七代目團十郎及びその家族からの書簡類が学界未知であり、かつ非常に貴重であったため早稲田大学において記者会見を行い、幾つかの新聞に紹介されるまでに至った。(平成24年9月26日の共同通信、読売新聞、静岡新聞他)そこで、書簡類の一部を演劇博物館で昨年10月2日~12月2日まで開催された八代目市川團十郎展(企画責任者:木村)及び『図録八代目市川團十郎展』で公開した。これら書簡類は、七代目の人物像を探る上で予想以上の発見であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず伊達家所蔵書簡類の全ての翻刻を行い内容を詳しく把握し、順次学会誌に発表していく予定である。 次に、収集した七代目の信州川路興行の資料の分析、京・大坂興行についての資料収集(昨年度は全体の半分を収集)、分析を優先して行い、その他前年度に資料を収集しきれなかった地域へ赴き、資料の収集、撮影に取り組んでいく計画である。
|
Research Products
(3 results)