2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J00277
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坂本 陽介 北海道大学, 大学院地球環境科学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | ハロゲン化学 / 対流圏化学 / 不均一反応 / オゾン反応 / 化学イオン化質量分析計 |
Research Abstract |
ハロゲンは地表の7割を占める海洋上で有意な量が存在し、全球的なオゾン消費に大きな影響を持つことが報告されている重要な化学種である。筆者は不均一反応を通じた定性的なハロゲンの生成、及び大気への放出メカニズムの解明と、気液相間の取り込み係数、放出係数など、定量的なパラメータの決定を行い、大気化学への定量的な寄与を見積もることを最終的な研究目標としている。 1年目の研究においてハロゲンを高感度で測定可能なことが判明したため新規に導入した負イオン化学イオン化質量分析計を、本年度も引き続き筆者のハロゲン不均一反応の研究へ応用し、濡れ壁管反応管を用いた実験において臭素イオン―オゾン不均一反応における臭素の放出係数を測定した。結果より、臭素イオン―オゾン反応のオゾン濃度依存及び臭素イオン濃度依存は既存の液相モデルを用いて定性的に再現される事が判明した。一方pH依存の結果はモデルの予想よりも高いpH(~8)での臭素放出を示した。この液相モデルとのかい離の機構は現在解明中である。臭素イオン―オゾン不均一反応は全球海洋上でオゾン消費に大きく影響を持つ反応であることが知られている。特にpH~8付近は一般的な海水のpH範囲であり、これまでの溶液モデルでは実際の臭素放出を再現しきれていない可能性を我々の結果は示唆している。我々の結果を用いた場合大気モデルによる臭素放出がどれだけ影響を受けるのか現在調査中である。この濡れ壁反応管を用いた臭素―オゾン反応における臭素放出は、第19回大気化学討論会において発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、濡れ壁反応管を用いたオゾン―臭素イオン反応系からの臭素分子生成の測定を行い臭素の放出係数を得た。オゾン―臭素イオン反応は大気化学では良くモデル化されており十分理解されているとされる反応である。しかし我々の実験値と比較する事で、モデルと実験値にかい離が有ることが新たに発見された。これは対流圏海洋上で重要な臭素放出が液相反応モデルを用いた見積もりでは過小評価されている可能性を示唆している。この結果は対流圏のオゾン化学を通じた酸化能力の見積もりに大きな寄与をすると思われる。したがって、当初予想を大きく上回る進展を見せたと評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年次の研究計画として、引き続きハロゲン(臭素、ヨウ素イオン)―オゾン不均一反応の実際の大気への影響の見積もりのために、オゾン反応におけるハロゲンの放出係数について濡れ壁反応管やエアロゾル反応管を用いて測定を行い、実験で得られたデータを基に、反応メカニズムや実大気への影響を纏め、学会や学術雑誌において発表を行う予定である。
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Research Products
(13 results)