2012 Fiscal Year Annual Research Report
フラストレート系における磁気伝導現象とダイナミクス
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12J00305
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
赤城 裕 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 近藤格子模型 / スピンカイラリティ / 幾何学的フラストレーション / チャーン絶縁体 / スピン波解析 / グリーン関数法 / モンテカルロ法 / バルク-エッジ対応 |
Research Abstract |
三角格子上強磁性近藤格子模型におけるスピンスカラーカイラル秩序相に対する量子揺らぎの効果を明らかにするために、局在スピンに対するHolstein_Primakoff変換によりマグノンを導入し、伝導電子とマグノンの結合がもたらす量子効果を調べた。伝導電子を介したマグノンの(異常)グリーン関数を詳細に解析した結果、古典局在スピン極限でスカラーカイラル相が安定化していたパラメタ領域において、従来の研究で見出されていた3/4フィリングカイラル相はフント結合が大きい領域で量子揺らぎに対して不安定化を示すのに対し、我々が見出した1/4フィリングカイラル相は全パラメタ領域で安定であることがわかった。またこの安定なカイラル相においては、量子揺らぎによるスピンモーメントの縮みは数%程度と小さく、古典スピンによる描像が良い近似となっていることがわかった。この1/4フィリングカイラル相は未だ発見には至ってはいないが、量子揺らぎに対するこの安定性は現実の系で見出される可能性を示す重要な結果となっている。 また、一方向に開放端境界条件を課した三角格子上の強磁性近藤格子模型を考え、レプリカ交換モンテカルロ法により系の端付近における磁気・電子状態の再構成の様子を調べた。その結果、スピンカイラリティ秩序相が安定化するパラメタ領域において、系の端には強磁性的なスピン配置が現れることを見出した。またそのような磁性の再構成の下でも、試料の端に伝導チャネルが形成されるパラメタ領域が存在することを明らかにした。今後の時間発展解析の出発点を与えるこれらの結果は、必ず端の存在する現実の系における振る舞いを示すものであり、バルク-エッジ対応の強固性を示す重要な結果となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画が概ね妥当であったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
動的平均場近似を用いてスカラーカイラル相の量子揺らぎに対する安定性の評価を行う。特に、S=1/2としたときの相違点や3/4フィリングにおける不安定性に着目した解析を行う。スカラーカイラリティの動的制御に関しては、今回得られた結果を出発点とし、電場や磁場、局所的励起構造等を導入した際のLandau-Lifschitz-Gilbert方程式に従った時間発展の解析を行う。また、ネマティック相と伝導電子が結合した系の模型の構築が完成したため、その解析をスピン波解析に類似した摂動論を用いて行う。
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Research Products
(14 results)