2012 Fiscal Year Annual Research Report
地震波散乱現象の観測による地域応力場変化推定法の研究
Project/Area Number |
12J00373
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡本 京祐 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 地震波散乱 / Q値 / 散乱減衰 |
Research Abstract |
・数値計算を用いて、地殻中に載荷される応力の変化と地震波の減衰率の関係を解明した。具体的には有限差分法を用いて地殻モデルを作成し、そのモデルに応力を載荷した前後でQ-1値(地震波の減衰率から得られる指標)変化を確認した。この実験により地殻応力が載荷されるに従って、Q-1値も上昇することが分かった。これより、地殻応力の大きさとQ-1値は比例することが分かる。また、主応力方向と地震波の入射波方向が一致したときにQ-1値が最大となり、直交したときにQ-1値が最少になることが分かった。 ・上記の数値計算より得られた知見を実データに適用した。得られた知見は下記である。 1.地殻応力の大きさとQ-1値は比例の関係がある。 2.主応力方向の変化に従って、Q-1値は周期的に変化する。 このことが、実データに見られるか、2008年岩手・宮城内陸地震の前後の実データを用いて解析した。GPSの観測結果から得られた地震前後のひずみの大きさ変化と地震前後のQ-1値変化に相関性が見えることがわかり、更にこの相関は、数値計算より得られた知見1.と調和的であることがわかった。このことより、実データにおいてもQ-1値変化が地殻応力変化と関係性を持つことが分かった。 ・一般的に前述のQ-1値変化は地殻中の内部減衰と散乱減衰の変化によって発生する。本研究の数値計算ではQ-1値変化は散乱減衰に起因すると仮定している。そこで、地殻中に内部減衰がある場において、上記のQ-1値変化の確認可能性を検討した。具体的には有限差分法にて内部減衰があるモデル内でのQ-1値変化を確認した。その結果、内部減衰が比較的小さい状態において、上述のQ-1値変化が確認できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は数値実験によりQ値と地殻応力の関係性を解明することに重きを置いていた。この件について、有限差分法を用いて両者の関係性を解明することができた。更にこの知見が実データにも適用可能であることを示唆することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は数値実験で得られた知見を用いて、実データ解析を進める予定である。具体的には日本各地に配置された地震計を用いて記録された地震動から得られたQ値とGPSから得られたひずみ、更に断層変位から求められる理想的なひずみの三種類のデータを用いて、Q値と地殻応力の関係性を精査する予定である。
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Research Products
(5 results)