2012 Fiscal Year Annual Research Report
一側手指の運動リズムが同側一次運動野興奮性に及ぼす影響
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12J00393
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
上原 一将 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 同側一次運動野 / 運動リズム / 経頭蓋磁気刺激法 / 運動誘発電位 |
Research Abstract |
本年度の研究目的及び研究計画は一側手指の運動リズムの変化が同側大脳皮質一次運動野(ipsilateral primary motor cortex ; ipsi-M1)に及ぼす影響に起因する大脳皮質内神経回路網変化(皮質内抑制回路,半球間抑制回路,運動関連領域とipsi-M1のconnectivity)について経頭蓋磁気刺激法(transcranial magnetic stimulation ; TMS)によって誘発される運動誘発電位(motor evoked potential ; MEP)を指標として検討することであった.健常成人計28名を対象とし,運動リズムの違い(1Hz,2Hz,3Hz)がipsi-M1興奮性変化に及ぼす影響及び短・長潜時皮質内回路(SICI,ICF,LICI)及び各種半球間抑制回路(IHI)の変化をpaired-pulse TMS法を用いて検討した.リズム運動中のipsi-M1興奮性変化はその運動リズムの違いに依存して変化し,1Hz,3Hzでは促通,2Hzでは特異的に抑制するという現象が観察された.また,この変化に起因する神経回路網として,LICI及び背側運動前野(dorsal premotor cortex ; PMd)とipsi-M1のconnectivity(PMd-M1)が2Hzを中心に特異的に変化することが明らかとなった.LICIは1Hz,3Hzでは抑制,2Hzでは特異的に脱抑制し,PMd-M1は1Hz,3Hzでは促通,2Hzでは特異的に抑制することが観察された.上記現象が観察された理由としてPMdはAuditory-motor interactionのメイン中枢であることが近年報告されており,音に合わせたリズム運動で特異的に活動することが明らかになっている.また,リズム運動は小脳や大脳基底核など皮質下領域の賦活が特異的にみられることが報告されているがLICIは皮質下領域の変化を反映する回路網であることが報告されているため本実験で観察されたLICIの変化は皮質下領域の活動を反映している可能性が考えられる.過去の脳イメージング研究ではリズム運動中の賦活領域の同定しか明らかにすることが出来なかったが,我々が用いたpaired pulse TMS法は実際の各関連領域の機能連結を電気生理学的に直接評価することが出来るため新規性が高く神経生理分野において有益な知見を提供することが出来たと考えられている.また,リズム運動中にipsi-M1の興奮性変化を記録するためのTMS実験手法の妥当性の検討も実施し学術論文として報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに平成24年度の研究計画である「一側手指の運動リズムの変化がipsi-Mlに及ぼす影響に起因する大脳皮質内神経回路網の変化」及びその実験手法に関する妥当性を検証した実験を遂行し国際誌に掲載することが出来た.その理由としては,予備実験などを通して実験手法をしっかりと確立できたこと,被験者の積極的な実験参加協力もあり,スムースに実験を遂行することが出来たことが挙げられる.平成25年度も本年度同様計画的に実験を遂行していく所存である.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り,今後は現在進行している末梢からの感覚入力リズムの違いがipsi-Ml興奮性変化に及ぼす影響について経頭蓋磁気刺激法,体性感覚誘発電位の実験手法等を用いて実験を継続して行い,末梢からの感覚入力がリズム運動中にipsi-Mlの興奮性変化に影響を及ぼす因子のひとつとなるか否かを精査する,また,感覚入力リズムの違いがipsi-Mlの可塑的変化に影響を及ぼすか併せて検討する.さらに,本年度で得られた神経回路網の知見をさらに検討するために非侵襲的介入(反復経頭蓋磁気刺激法,経頭蓋直流刺激法)を用いてリズム運動時ipsi-Mlの興奮性変化に関与すると考えられる関連領域(運動前野,皮質下領域)を刺激することによりリズム運動のパフォーマンスがどのように変化するかを上記研究手法に熟知し実験環境が整った海外研究機関で検討を進める予定である.
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Research Products
(6 results)