2012 Fiscal Year Annual Research Report
三重鎖核酸形成における標的配列の拡張を志向した新規人工核酸の開発
Project/Area Number |
12J00463
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
赤羽 昌明 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 三重鎖核酸 / CG塩基対 / TA塩基対 / 伸長後修飾法 |
Research Abstract |
本年度はまず三重鎖核酸形成における課題の一つであるCG塩基対認識を目的として、伸長後修飾(PEM)法により新規人工核酸塩基の探索研究を行った。具体的には、これまでの研究ではCG塩基対と新たな水素結合を形成するために、プロトンドナーとなる官能基としてヒドロキシル基などの中性官能基を主に探索してきたが、今回は塩基性アミノ基ユニットを有するものを中心に合成し、評価を行った。その結果、(3S)-グアニジノピロリジノピリミジン-2-オン塩基がこれまでで最も高いCG塩基対認識能を示すことを明らかとした。また(3S)-グアニジノピロリジノピリミジン-2-オン塩基に対して、糖部修飾との組み合わせについて検討を行った。我々の研究室ではBNA(Bridged Nucleic Acid)と呼ばれる一連の合成核酸ユニットを世界に先駆けて発表しており、これはフラノース環の2'位と4'位が化学的に架橋された構造を有し、その糖部の構造的な「揺らぎ」を抑制することで三重鎖核酸形成時のエントロピーロスを減少させることが知られている。今回私はこのグアニジノピロリジン誘導体の2',4'-BNA修飾体を化学合成し、DNA自動合成によりオリゴヌクレオチドに導入後、Tm値を算出することでCG塩基対認識能を評価した。その結果このグアニジノピロリジンBNA修飾体とCG塩基対のトリプレットは、本研究の目標と位置づけていたフルマッチ塩基対(T・ATやC+・GC)と同等の安定性を示すことを見出した。 一方もう一つの課題であるTA塩基対の認識に関してだが、CG塩基対認識研究より得た知見をもとにT部分を認識する核酸塩基コアの探索を行った。具体的には当初予定していたフェノール骨格に加えて、ピリドン骨格やアミノピリジン骨格などを塩基部に有するヌクレオシドを化学合成し、オリゴヌクレオチドに導入後、Tm値を算出することでTA塩基対認識能を評価した。そしてスクリーニングの結果、アミノピリミジン骨格を有する人工核酸がTA塩基対を選択的に認識することを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずCG塩基対の認識に関して計画書の通りオリゴヌクレオチド上での化学反応(PEM法)を活用して、多様な誘導体の合成と評価を行い、これまでのものを遥かに凌ぐ認識能を示すグアニジン誘導体の探索に成功し、現在論文として報告する準備をしている。次にTA塩基対の認識に関しても予定通り、TA塩基対を選択的に認識するアミノピリミジン誘導体を見出すことに成功し、現在論文として報告する準備をしている。以上より研究進捗は極めて良好であり、期待通りに進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今回合成に成功したグアニジノピロリジンBNA修飾体とCG塩基対のトリプレットは、本研究の目標と位置づけていたフルマッチ塩基対(T・ATやC+・GC)と同等の安定性を示すことを見出した。よって今後は標的配列中の複数カ所のCG塩基対認識や細胞レベルでの活性評価について検討していく方針である。一方、TA塩基対の認識に関しては、今後、核酸塩基コアをアミノピリミジン骨格として、アミノ基に修飾を加えることでTA塩基対と新たな水素結合を形成するような人工核酸塩基を設計、合成する。そして本年度中に細胞レベルでの活性評価について検討していく方針である。
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