2012 Fiscal Year Annual Research Report
液中レーザーアブレーション法による太陽系初期形成鉱物の同位体分析
Project/Area Number |
12J00631
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡林 識起 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 液中レーザーアブレーション / タングステン同位体 |
Research Abstract |
今年度は、液中レーザーアブレーション法による普通コンドライト中のメタル相及びサルファイド相の鉄同位体比分析を中心に研究を進めた。サルファイド相は磁性を持たないため、シリケイト相との分離が非常に難しく、普通コンドライトの構成物質の成因と進化を知るうえで大きな障害となっていた。本研究では液中レーザーアブレーション法によりメタル相のみ、もしくはサルファイド相のみをサンプリングし、その鉄同位体比を測定することに成功した。その結果、それらのコンドライト構成物資が形成されたときに持っていたであろう初期の鉄同位体比と、その後コンドライト母天体での変成による鉄同位体比の分別過程が明らかになった。これらの研究結果は、随時国内外の学会で発表した。 より微小な鉱物の同位体比測定のためには、より高感度な分析法が必要である。そこで年度の後半は、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いて、微少量のタングステン同位体分析をおこなうための分析手法の開発をおこなった。本研究では、ETV(electrothermal vaporization)というICPへの試料導入法に着目した。この方法は1970年代から使用されている試料導入法であり、ネブライザーを用いた方法に比べて試料の損失が少ないことが特徴である。しかし、従来のETV法ではタングステンのような難揮発性元素は蒸発させることが難しく、また、蒸発してもすぐに凝縮して大きな粒子を形成してしまうため、難揮発性元素の同位体分析には不向きとされてきた。そこで本研究では、蒸発させた試料の再凝縮を防ぐために、従来はAr雰囲気下で行われていた試料の蒸発をHe雰囲気下でおこなうよにした。これは、HeガスがArガスに比べて ̄10倍の熱伝導率を持っているため、タングステン試料の再凝縮が起こりにくいと考えたからである。その結果、He雰囲気下で蒸発させるETV法ではタングステンのような難揮発性元素でも安定した信号プロファイルを得られることがわかった。また、25ngの微小量のタングステン試料から高精度同位体分析が可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
液中レーザーアブレーション法の開発により、今までにない微小領域からの固体サンプリングが可能となった。また、独自にETV法によりICP-MSへの試料導入装置を自作し、分析条件の最適化をはかった。その結果、同位体分析に必要なW試料量を従来の分析の半分以下に抑えることができるようになった。現在、さらなる分析法の開発をすすめており、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画にはなかったETV試料導入法の開発により、太陽系初期形成鉱物の同位体分析のための研究が大きく進展した。今後は、実際に液中レーザーアブレーション法により隕石中から鉱物をサンプリングし、そのタングステン同位体比を測定することになる。測定にETV試料導入法を用いることにより、従来の方法よりも微少な試料量で同位体分析をおこなう。
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Research Products
(6 results)