2012 Fiscal Year Annual Research Report
転換期朝鮮学校の人間形成-国民教育の成立・展開・転生-
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12J00671
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
呉 永鎬 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 朝鮮学校 / 在日朝鮮人 / 教育史 / 人間形成 / 移動 / 脱植民地化 / 1950~60年代 / 異種混淆 |
Research Abstract |
本研究は、日本における代表的な民族学校である朝鮮学校の教育の性格を、その型が作られる1950~60年代の「教育の日常」から掬い上げ、描き出すことを目的としている。 平成24年度の成果は大きく二つある。第一に東京、大阪、京都、兵庫、広島にある朝鮮学校が所蔵している史資料の現状を把握し、その利用が可能となった点である。発掘した資料のうち、児童生徒たちの作文集や、教員の授業実践報告等は、教育の日常、朝鮮学校の歴史的様態を掴む可能性を孕んだ史資料として非常に貴重であることは言うまでもないが、とりわけ各学校が1966年4月に統一的なフォームで作成を開始した「沿革史」の発見は大きな成果であった。沿革史には各学校の歴史記述のみならず、就学者数、教員の最終学歴、部活動の記録、当時の写真等が掲載されており、当該期朝鮮学校の姿を多方面から把握することを可能とする。全国の朝鮮学校で一斉に作成された沿革史を渉猟すれば、本研究は限定的な地域ではなく、全国規模の説得性を持つものとなるだろう。 第二に、研究の成果を研究会の論文および三つの学会で発表した。特に教育史学会の発表(2012年9月)では、朝鮮学校の教育実践から、脱植民地化という理念と、在日朝鮮人の生活の論理との競合・同調・交渉の中で構築される、異種混淆的な朝鮮学校の教育のあり方を示した。1940年代後半の学校閉鎖令等で破壊された朝鮮学校教育体系が再確立されていく当該期を検討したことによって、今日まで続く朝鮮学校の教育の成り立ち方の構図を解明することが可能となった。この成果は研究論文としてまとめられ、現在査読中である。また、その他学会誌への投稿論文も現在準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り史資料の調査を行うことができ、また新たな史資料を発掘できた。文献の調達等、研究環境の整備も順調に進んでいるため、当初の計画通り、研究は進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
引続き全国の朝鮮学校やその関係者が保持している可能性がある史資料の調査を行う。それら調査に基づき見出される知見を学会等の場で発表し、理論的研鎖を積む。その成果を研究論文や、その他の方法で公表し、教育学、教育史、教育社会学等の関連研究領域および教育実践の発展に寄与する。
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Research Products
(5 results)