2012 Fiscal Year Annual Research Report
糖質酵素における糖転移能を支配する新しい構造因子の分子解析
Project/Area Number |
12J00871
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 桃子 北海道大学, 大学院・生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | α-1,6-グルコシド結合 / 糖転移 / デキストラングルコシダーゼ / 鎖長特異性 |
Research Abstract |
イソマルトオリゴ糖(α-1,6-グルコシド結合)は,腸内細菌叢を改善するプレバイオティクス機能や食品の物性改善効果を持つため,食品・医薬品などに広く利用される.その工業生産は,糖質酵素であるα-グルコシダーゼの糖転移作用で行われている.本研究のターゲット酵素である糖質加水分解酵素デキストラングルコシダーゼ(DexB)は,α-1,6グルコシド結合特異的に主に加水分解を行うが,糖転移反応も行う酵素である。本研究では,有用糖合成の高効率化や新規糖合成のための知見を蓄積するために,モデル酵素としてDexBを用い糖転移能を決定する構造要因解明を進めている.DexBによく似た全体構造を持ち反応特異性も同じであるが,DexBよりも高い糖転移能を持つイソマルトオリゴサッカライド6-α-グルコシルトランスフェラーゼ(I6GT)が存在する.酵素の活性ポケット入り口を構成するβ→αループ6においてDexBとI6GT間で配向の違いが見られたため,DexBのループ6を16GT型に置換することで糖転移率の上昇を目指した.変異体を作製し,イオン交換HPLC法によりDexB野性体および変異体の2糖から5糖を基質としたときの生成物の遊離初速度を測定した.その結果,DexB野生体と変異体間で糖転移率に違いは見られなかったものの,鎖長特異性において変化が見られた.すなわち,野生体は3糖を最も良く分解したが,変異体は4糖を最も良く分解した.また触媒効率を表すパラメーターが,野生体では3糖において最も高い値を示したが,変異体では測定した2-5糖でほとんど同じ値となった。当該年度の研究結果より,着目した構造要因がDexBの鎖長特異性を決定する構造の一つであることが初めて明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ターゲット酵素DexBの糖転移率の上昇を期待してキメラ変異体酵素を作製し精密な機能解析を行うことで,着目した構造要因が鎖長特異性決定に関与するという新たな結果を得ることができた.DexBは糖質加水分解酵素ファミリー中でα-アミラーゼを含む最も大きなファミリーに属する酵素であるため,多くの類縁酵素群において新たな知見が得られたといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はリガンドと野生型もしくは変異型酵素の複合体結晶構造を得ることで,糖質加水分解酵素における機能・構造両面からの網羅的研究を達成することができると考えている。リガンドの濃度の検討を中心とした結晶化条件の最適化により構造解析に適した良質な結晶を得ることが可能であると考えられる.
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