2013 Fiscal Year Annual Research Report
糖質酵素における糖転移能を支配する新しい構造因子の分子解析
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12J00871
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 桃子 北海道大学, 大学院生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イソマルトオリゴ糖 / デキストラングルコシダーゼ / 鎖長特異性 / 糖転移率 |
Research Abstract |
イソマルトオリゴ糖(α-1,6-グルコシド結合で連なったオリゴ糖)は腸内細菌叢を改善するプレバイオティクス機能などを持ち食品などに広く利用される。その工業生産は糖質酵素により行われるため、有用糖合成の高効率化や新規糖合成のために、酵素の様々な機能を決定する構造要因の解明が求められている。本研究では糖質加水分解酵素のうち最大のファミリーに属するデキストラングルコシダーゼ(DexB, α-1,6-グルコシド結合特異的)を用いて、種々の機能を決定する部分構造の解明を進めている。本年度は、まず類縁酵素イソマルトオリゴサッカライド6-α-グルコシルトランスフェラーゼ(I6GT)との比較により鎖長特異性を決定する部分構造を解明した。活性ポケット入り口を構成するループ6において2つの酵素間で配向および構成残基の違いが見られた。DexBのループ6をI6GT型に置換した変異体を作製し機能解析を行った結果、DexB野生体は3糖特異的であった一方、DexB変異体はI6GTと同様に3等以上の長さの基質を同程度好む性質を示した。さらに、DexBの求核触媒残基への変異導入により糖転移率を高めた変異体を作製することができた。DexB野生体は加水分解と糖転移反応の両方を行う酵素である。求核触媒残基であるグルタミン酸をシステインに置換し(システイン導入変異体)その後酸化することで求核触媒残基をの側鎖をSOOHとした(酸化変異体)。システイン導入変異体では活性が失われたが、酸化変異体では活性が回復しさらに野生体よりも高い糖転移率を示し、長い鎖長の生成物を作ることができた。このような変異を導入した変異体はこれまで他の酵素においていくつか報告があるが、糖転移率に変化が見られたのは本酵素が初めての例となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は機能を決定する構造要因について複数の新たな知見が得られた。DexBキメラ変異体の作製・機能解析に占り鎖長特異性を決定する部分構造について新たな知見を得ることができた。また糖転移率を顕著に上昇させた変異酵素を作製することができた。DexBは糖質加水分解酵素ファミリー中でα-アミラーゼを含む最も大きなファミリーに属する酵素であるため, 多くの類縁酵素群に対して議論の発展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
DexBの鎖長特異性に関しては、さらに別の類縁酵素oligo-1,6-glucosidase(016G)との比較によりファミリー全体への議論の発展を考えている。016GはDexBよりも短い鎖長の基質しか分解できないが、ループ6の一次配列は全体としてI6GTに類似している。そのためループ6以外の部分構造が鎖長特異性に関与する可能性があり、今後はさらに機能構造相関研究を進める予定である。さらに触媒残基変異体については野生体よりも顕著な機能変化が見られたが、その詳細な原因は明らかでない。より明確な機能変化の原因を探るため、反応中間体である酵素-グルコース複合体の立体構造をX線結晶構造解析により得る予定である。
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Research Products
(2 results)