2012 Fiscal Year Annual Research Report
Super B factory によるTeVスケールのフレーバー構造の解明
Project/Area Number |
12J00892
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡邉 諒太郎 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | フレーバー / Bの物理 / 新物理探索 |
Research Abstract |
将来始まる『super Bfactory』による素粒子実験では、B中間子の崩壊現象から素粒子のフレーバー構造の詳細が解明されると期待されている。エネルギースケールがTeVを超える領域を直接観測し、未知の重い新粒子を作り出そう・というLHC実験とは対照的に、super Bfactoryは膨大な崩壊現象から、フレーバー構造に影響を与える新たな現象の僅かな痕跡を見つけようという実験である。これらは互いに相補的な関係にあり、どちらも素粒子物理学の発展には欠かせない重要な実験である。 super Bfactoryによる新物理の探索で重要になってくるのが、実際に新たな現象の痕跡が見つかった時に、それが具体的にどのような理論によるものなのかを判別できるのか、ということであると私は考えている。新たな物理の理論模型の候補は様々であり、1つの模型においても、多くのパラメーターが存在する。それら1つ1つに特徴的な振る舞いを見つけ、判別できる方法を調べる事がこれからの素粒子物理学で重要な要素となってくる。 現在までの研究で得られたB->D(*)τνに対する「荷電ヒッグス粒子」の影響に関する成果をここで簡潔に説明する。まず、荷電ヒッグス粒子の影響を見る物理量としてτ粒子のスピン偏極度に注目した。その理由は、この崩壊過程に影響する相互作用の種類によって、τ粒子の偏極度への影響の出方が異なってくるからである。Wボソン粒子と荷電ヒッグス粒子は異なる種類の相互作用であるのでこの差異を見る事で荷電ヒッグス粒子の特徴を捉える事ができると考えた。その結果、崩壊率とこのτ粒子の偏極度の相関を見る事で、荷電ヒッグス粒子の影響の有無を判別出来るという事を示せた。 次に、この崩壊過程におけるτ粒子の偏極度が測定可能なのかを調べた。瀬子の偏極度から相互作用の形を探るという手法は標準模型の検証にも用いられて来たので、その手法に習い今回の場合に応用した。その結果、τ->πνなどのτ粒子の崩壊におけるn中間子のエネルギー分布を見る事でτ粒子の偏極度が測定可能である事を示した。さらに、この物理量がsuper Bfactoryでどの程度の精度で測定されるかを詳しく評価した。その結果、数%の精度で測定できると期待される事を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載されていた目的はほとんど達成でき、今年までの研究の内容を論文として発表できたため、研究の目的はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次の研究対象としてB->K(*)vv及びB->K(*)l^+l^一という崩壊現象に注目している。B->K(*)l^+l^一は昨年にその崩壊の分布が標準模型の予言からずれているように見えるという報告がされた事で話題になった。これとsuper B factoryで解析が可能になると期待されているB->K(*)vvを組み合わせる事で、フレーバーの違いに起因する新たな物理の特徴を捉える研究を行いたいと考えている。
|
Research Products
(1 results)