2013 Fiscal Year Annual Research Report
イディッシュ演劇とクレズメル音楽隊に見るユダヤ文化と東欧文化の融合
Project/Area Number |
12J00966
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小倉 直子 首都大学東京, 人文科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イディッシュ / イディッシュ演劇 / クレズメル音楽隊 / ユダヤ文化 |
Research Abstract |
本年度は、所属研究機関での資料解析と、国外でのフィールドワークを中心に研究を進めた。具体的には、ニューヨーク、ベルリン、ウィーンを訪れ、それぞれ資料収集や調査活動をおこなった。都市ごとの活動は、それぞれ以下のとおりである。 まず、ニューヨークでは、ユダヤ調査研究所(YIVO)を活動の拠点とし、イディッシュ演劇に纏わるオリジナル台本や楽譜、ポスター等、各種資料収集をおこなった。そのほか、イディッシュ演劇研究者のナーマ・サンドロウ女史と接見し、イディッシュ演劇及びイディッシュ文化全般に亙る議論をした、またイディッシュ演劇とイディッシュ演劇に関する音楽会の鑑賞やイディッシュ演劇関係者へのインタビュー等もおこなった。 ベルリンでは、ベルリン自由大学でベルリンにおける世紀転換期のイディッシュ劇団の活動を研究しているペーター・シュプレンゲル教授と会い、研究の進め方についての師事を仰いだほか、イスラエル生まれのドイツ系・ユダヤ人のダン・ラハフ氏によって2006年にベルリンで旗揚げされたユダヤ劇団ビマーへと足を運び、現代ユダヤ演劇を鑑賞するなどした。 ウィーンでは、演劇・映画・メディア研究所でイディッシュ演劇を研究しているブリギッテ・ダーリンガー女史と会い、研究の方向性について助言を賜った。また、現在もウィーンにおけるクレズメル音楽隊の現状をフィールドワークにて調査し、クレズメルとして活動する人へのインタビューもおこなった。 これらの調査活動からは、国内では実感することの難しかった、イディッシュ文化世界に生きる人びとの血潮の通った文化活動を体感することができ、今後、研究を進める上での大きな手掛かりとなった。また、上述のような、今年度、在外活動でインタビュー等をおこなうことのできた人びとの多くは、昨年度に国内に拠点を置いた研究調査で得ることのできた人脈によるものであり、これまでの研究は、着実に実を結びつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年度にあたる平成25年度は、長期間の在外研究を予定していたが、各方面との調整の結果、国外での研究期間はひと月半程度と、当初の予定ほど長期間には及ばなかった。しかし、昨年度より築いてきた人脈が新たな人脈を呼び、思いがけないような稀な資料を得ることができ、また、多くの人へインタビューも実現するなど、計画を上回る結果を得た。尚、今年度におこなった研究結果は、学会での口頭発表と2本の論文にまとめ発表予定であり、現在準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、在外研究期間は予定とは異なるものの、おおむね予定通りに研究を進めることができた。来年度は、これまでの研究調査を基に、当研究の目的である、動的文化からイディッシュ文化世界の大衆性に焦点をあて、博士論文の執筆を目指す。その際には、今年度に知り合うことのできたベルリン自由大学のペーター・シュプレンゲル教授やウィーンのブリギッテ・ダーリンガー先生にも師事を仰ぎ、不足している資料、調査等を補うためにも、再度現地へ趣き、数か月程度滞在し、さらに研究を深める予定である。
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