2012 Fiscal Year Annual Research Report
アンチドット型光格子中における量子気体の非平衡・非定常ダイナミクスの実験的研究
Project/Area Number |
12J00984
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山下 和也 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ボーズ凝縮 / 光格子 / 量子非平衡現象 / レーザー冷却 |
Research Abstract |
本研究では、量子気体であるボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC)した量子気体系に対してアンチドット型光格子を用いることで量子乱流を生成し、量子気体の形状、次元を含めたさまざまなパラメータを光学的手法で制御した下での量子気体の非定常・非平衡ダイナミクスの直接的な観測を行うことを最終目的としている。 1年目である2012年度の研究計画としては、 ・アンチドット型光格子生成のためのマイケルソン型光干渉計およびエレクトロニクスの制作 ・原子波干渉パターンを観測することによる相対位相の決定 ・原子波散乱の観測といったアンチドット型光格子中にある量子気体系に関する基礎的物性の探索 を挙げており、この実現に向けて研究を行った。 本年度の研究の経過は以下の通りである。本研究を行うにあたり、現在の受け入れ研究室では本研究での実験の基盤となるボーズ・アインシュタイン凝縮生成装置の立ち上げを行っており、まずBECの生成を第一目標とした。本研究の開始直前である2011年末に、Rb原子気体のボーズ・アインシュタイン凝縮の生成に成功した。その後、装置の最適化及び光格子光学系、エレクトロニクスを製作し、2012年4月よりアンチドット型光格子生成の予備的実験を行った。その結果、相対位相によって光格子の幾何学的構造が変化している様子を確認し、アンチドット型光格子におけるBECの原子波干渉パターンの観測に世界で初めて成功した。 予備的実験の詳細と結果については、2012年度日本物理学会秋季大会にて「アンチドット型光格子中での原子のコヒーレンス」の題目で講演を行った。BEC生成実験の実際については、間もなく論文にて発表予定であり、現在執筆および議論を行っている最中である。また、上記の実験と並行して量子性を持った非凝縮の熱的原子気体を用いた原子波散乱の観測実験を並行して進めており、その結果、BECの原子波干渉パターンに類似したアンチドット型光格子特有の2次元原子波ラマン-ナース散乱現象の観測に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では研究の目的に挙げた「アンチドット型光格子中におけるボーズ原子気体の非平衡・非定常ダイナミクスの解明」において重要な、アンチドット形光格子の製作およびアンチドット型光格子における原子波干渉パターンの実験的観測に成功した。これは世界的にも初の観測であり、本研究の最終目的である量子渦や乱流生成に向けた大きな一歩となったため、今年度において本研究は概ね順調に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目である2013年度は、1年目に行った実験をさらに発展させた、2次元青色離調光格子における相対位相とポテンシャル深さを独立に変化させた場合の原子気体の相図を確定させる実験をまず行う。これによってこの全く新しい系の静的な性質を詳細に明らかにする。これに引き続いて原子気体を入れたままアンチドット型光格子全体を動的に揺り動かす実験を行い、量子乱流、量子渦といったこの系における非平衡・非定常なダイナミクスの実験的研究を進める予定である。ただし、現在の装置に関する問題として2013年度4月現在において蒸発冷却用光トラップ光源が不調であるという点があるが、現在その代替となる光源を制作中である。また、光源製作と並行して非凝縮原子気体を用いたアンチドット型光格子による原子波散乱実験も継続して行う。
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