2012 Fiscal Year Annual Research Report
膵臓癌間質相互作用における間葉系幹細胞(MSC)の関与の解明と新規治療法の開発
Project/Area Number |
12J01237
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤原 謙次 九州大学, 医学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 膵癌 / 間葉系幹細胞 / 膵星細胞 / 癌間質相互作用 |
Research Abstract |
膵臓癌は間質細胞が多くを占めるDesmplasiaを病理学的特徴とする。近年、癌細胞と間質の細胞が相互に作用しその悪性度を増す癌間質相互作用が報告され、申請者の研究室より膵間質に存在する膵星細胞の一部の集団が癌間質相互作用を通じて癌細胞の悪性度を特異的に促進することを発表した。また、近年提唱されている新しい概念として間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cells:MSC)と呼ばれる細胞があり、この細胞は骨髄に存在し間葉系組織への分化能を有する細胞であるとされる。申請者は膵間質に存在する膵星細胞を特異的に誘導するMSCが膵癌細胞浸潤の先導役として働き、原発巣でのDesmoplasia形成と遠隔臓器での微小転移巣形成にも関与するのではないかと考え、これを研究課題とした。本年度は癌間質相互作用を主導する間質細胞の表面抗原の同定を試みた。当研究室で膵癌切除組織より樹立した膵星細胞15種類ほどを用い、rt-PCRとフローサイトメトリーを用いることで膵星細胞における発現状況をほぼ把握しえた。次に免疫組織化学染色を用いて複数種有望な表面抗原の解析を行った。これはin vitroのデータと、in vivoのデータを関連付けることにより、より実際の疾患における意義を追及するためである。この中で膵星細胞におけるCD271発現が、予後良好因子であるとする特徴的な結果がみられた。また、膵癌細胞の一部にCD105とCD166が発現していた。まずCD271に関しては癌細胞と膵星細胞の共培養を行うことにより、癌細胞の一定時間影響により一旦膵星細胞中にCD271は増加し、そしてその後減少するという現象を見出した。この結果を国際膵癌シンポジウムにおいて報告した。また、同内容を英文雑誌PLOSOneに投稿し、掲載の運びとなった。癌細胞におけるCD105とCD166の解析を進めた。この過程においてCD105陽性膵癌細胞が癌間質相互作用の影響を受けやすいことを突き止め、英文雑誌Pancreasに投稿し採用となった。CD166に関してはアジア太平洋肝胆膵学会で報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた膵星細胞における表面抗原解析を終了し、また浸潤能に特化した新しい分取法として、Invasion assayの技術を応用し浸潤細胞・非浸潤細胞で分離を行い、RNAを抽出しMicroarrayを行ったところNPAS1という蛋白が癌細胞に向けて浸潤した膵星細胞内で高値であることを発見した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本来の目的である癌細胞に強く影響する間質細胞({MSCないし特定の膵星細胞}の同定および機能解析を行うため、本年度見出したCD271の過剰発現による詳細な機能解析、そしてNPAS1の解析をすすめる。そして、当初目標としていた膵癌細胞と純化した膵星細胞の直接共培養を行い、そこから更に両者を選択的にソートし培養前後での網羅的発現解析をおこない、癌間質相互作用関連分子の同定を試みる。
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Research Products
(6 results)