2013 Fiscal Year Annual Research Report
生態系エンジニアの可塑性・変異が及ぼす群集への影響:トビケラの営巣行動による検証
Project/Area Number |
12J01273
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡野 淳一 京都大学, 生態学研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | トビケラ / ニッチ構築 / 河川生態系 / 動物群集 / 営巣行動 |
Research Abstract |
本研究は、トビケラの①営巣行動(ニッチ構築)の種内地理的変異および可塑性が及ぼす、河床の安定化・流下有機物量への影響、底生動物群集への影響を、野外調査と操作実験を組み合わせ検証することを目的としている。 2013年度は、昨年度に明らかになった、営巣行動(ニッチ構築)の種内地理的変異を引き起こす環境要因を調査した。各調査地点において、河川の物理環境(流速、水深、礫の大きさ・はまり度)を測定し、営巣の地域変異との相関関係を解析した。その結果、営巣行動の変異は、生息場である河床の礫の大きさによって引き起こされており、「大きい礫が優先的な河川の個体群は礫下の砂地に潜りこみ、小さな礫が優先的な河川の個体群は礫と礫の間で営巣する」ことが示唆された。これらの結果から、営巣の場所選択が地域で異なることで、礫の安定化と他種の動物種への影響の仕方も地域によって異なることが期待された。営巣による環境改変・動物群集への影響についての先行研究はあるが、営巣行動の違いに着目した例はほとんどない。トビケラ営巣-環境・動物群集の地域特異的な関係を示すことができれば、今後のニッチ構築研究の新しい視座を与えうる。 また、当初は底生無脊椎動物の群集への影響を検証していたが、調査過程で、トビケラの網が微生物の生息場所になっており、微生物群集への影響もあることが明らかになってきた。先行研究ではトビケラの造網による河床安定化を通じて、他種の底生無脊椎動物の多様性に影響があることが分かっているが、今回の発見からは新たに微生物の多擬性にも影響を持つ可能性を示せるかもしれない。このように当研究からさらに発展性の見込まれる現象も発見できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、造網性トビケラの営巣変異が、環境改変、群集への影響にどのように波及するかの検証を、流路実験によって明らかにすることを2013年度の計画としていた。しかし、流路作成の過程での問題解決、野外を合理的に再現するための実験設定の調整を綿密に行ったため、実際の検証には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度までの調査結果は、現在、結果を取りまとめ、国際誌への投稿論文を作製中である。 2014年度は、流路を使い、造網性トビケラの営巣変異が、環境改変、群集への影響にどのように波及するかの検証する。流路実験の手法は2013年度に綿密に行ったため、スムーズに検証が進むと見込まれる。
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Research Products
(6 results)