2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J01422
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
早川 郁美 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 細胞性粘菌 / 種間認識 / 細胞接着 |
Research Abstract |
本研究は、細胞性粘菌の種間認識・選別機構を分子レベルで解明することを目指す。また、申請者のこれまでの結果により、細胞性粘菌は何らかのシグナル分子を種間で共通利用し、他種との共存が適応的に有利であることが示唆されている。本研究はこのシグナル分子の特定に加え、実際の野外環境下における複数種の共存関係を調査することで、細胞性粘菌の種間相互作用について一貫した理解を得ることも目的としている。平成24年度は1、種間認識・選別機構に関与する因子の特定2、野外サンプリングの実施を到達目標とした。実験にはDiclyoslellum discoldeum(Dd)およびD.purpureum(Dp)を主に用いた。 1、種間認識・選別機構に関与する因子の特定 これまでの研究結果と、細胞性粘菌の接着因子に関する知見から、種間認識・選別に関与する因子として、Contactsite A(CsA)、TgrClを候補に挙げた。平成24年度は、Dpにおけるこれらの因子をDdに発現させ(それぞれDp-csA株,Dp-tgrCl株と呼ぶ)、異種の混合状態から同種を選別する過程を追跡した。結果、Dp-csA株については野生型と差が無かったが、Dd側にDp-tgrC1株を用いた場合では、2種の細胞は完全には選別されず、混合した多細胞体を形成した。これは、細胞性粘菌の種間認識・選別機構にTgrClが関与することを明確に示す。TgrC1は、本研究とは独立したHiroseらの研究によって、Dd種内の株間認識に関わることが示されている(Hirose et al., 2011)。今回の結果から、種間の認識・選別機構は種内の株間認識・選別機構と共通の機構を用いている可能性が出てきた。今後、細胞性粘菌の種分化を議論する上で重要な知見となることが期待される。 2、野外サンプリングの実施へむけて 平成24年度は、予定する野外サンプリングの準備段階として、大学構内の植物園において少量の土壌を採取し、細胞性粘菌の単離と、SSUの塩基配列から複数種の同定を行い、その技術を習得した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目的である、細胞性粘菌における種間認識・選別機構の解析については、到達目標としていた関与因子の特定を達成した。野外サンプリングに関しては、実験に必要な技術を確立し、フィールドでの調査を遂行する準備は十分整った。また、細胞性粘菌が種間で共有しているシグナル分子について具体的な候補をしぼり、異種間形質転換用コンストラクトを作製することも進めている。以上から研究の進展は順調であると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
種間認識・選別機構の解析をさらに進める上で、客観的な定量データは不可欠である。現在は経時的な画像データが主となっているため、定量化にむけた合理的で効率のよい方策を検討する。また、導入した遺伝子の発現レベルを操作し、同種選別においてTgrC1が機能していることをより明確に示していく。 同時に、平成25年度は種間で共有するシグナル因子の特定を目標とし、野外における共存関係の調査を実施する。
|
Research Products
(1 results)