2012 Fiscal Year Annual Research Report
ラットにおける強いストレスが後のストレス鋭敏化を引き起こす機構の解明
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12J01833
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
領家 梨恵 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 恐怖条件づけ / 心的外傷後ストレス障害 / ラット |
Research Abstract |
強いストレスが後のストレスに対する鋭敏化をもたらす機構の解明を目指している。本研究では、ストレスによって分泌される神経修飾物質を操作し、ストレス誘発性恐怖反応増強効果形成における、強いストレスによって分泌される神経修飾物質の関与を明らかにする。 被験体にはWistar-Imamichi系雄ラットを用いた。グルココルチコイド(GC)合成阻害薬腹腔内投与が、足部への電撃(1mA、1秒)4回と強制水泳の複合ストレス(MS)によって引き起こされる恐怖反応増強効果に及ぼす影響を検討した(実験1)。具体的には、ラットにGC合成阻害薬を投与した直後にMS処置を行い、その後、恐怖条件づけ(FC)を用いることで、MSによって引き起こされた行動変容(恐怖反応増強)を測定した。FCにはごく弱い文脈恐怖条件づけ(0.1mA、2秒)を用い、MSの電撃装置とは全く異なる装置・環境であった。MSの2週間後に条件づけを行い、条件づけの翌日・7日後・14日後の計3回の保持テストを行った。これによりMSから長期経過後の易刺激性およびその持続を観察することが可能であり、PTSDのようにストレス事象から長期経過した後もなお過度なストレス反応をもたらすストレス障害の病態を模倣すると考えられる。くわえて、ノルアドレナリン(NA)受容体遮断薬腹腔内投与が、MSによって引き起こされる恐怖反応増強効果に及ぼす影響を検討した(実験2)。ラットにNA受容体遮断薬を投与した直後にMS処置を行い、その後のFCを用いた行動変容を測定した。その結果、MS前GC合成阻害薬投与またはNA受容体遮断薬投与は、いずれの両処置もMS誘発性恐怖反応増強に影響を及ぼさなかった。ストレスによるGC分泌またはNA受容体活性化というそれぞれの個別の反応は、強いストレスによる後のストレスの鋭敏化を引き起こす機構に決定的な因子ではないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに、ラットの強いストレス前のGC合成阻害薬およびNA受容体拮抗薬投与の効果を検討した。これにより、ストレス鋭敏化に関与するであろうラットの事前に与えられたストレスによって引き起こされる神経修飾物質の候補を絞りこむことに寄与した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、MS前CRF受容体遮断薬脳室内投与を行い、強いストレス後のストレス鋭敏化を引き起こす機構へのCRFの関与を検討する。
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Research Products
(2 results)