2012 Fiscal Year Annual Research Report
正標数上の代数多様体に対する双有理幾何学と極小モデル理論
Project/Area Number |
12J01937
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 公 京都大学, 理学研究科, 学振特別研究員(PD)
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Keywords | 双有理幾何学 / 正標数 |
Research Abstract |
私は正標数の3次元の代数多様体の極小モデル理論について研究を続けている。3次元の基定点自由性定理やフリップの存在を証明する事が目標である。昨年度までは2次元の場合に、正標数の極小モデル理論を完成させた。より正確には、3次元の場合に一般化する為、2次元の場合の基定点自由性定理の証明に2つの証明を与えた。しかし、どちらの手法もそのままでは3次元の場合には一般化できない事も分かっている。本年度は、2つの論文を書いた。 1つ目は半対数的標準な曲面に対するアバンダンスを証明した論文である。、この論文では、2次元の半対数的標準な多様体に対して、アバンダンス定理を証明した。これはゼロ標数の時に3次元の極小モデル理論を完成させる際に必要となったものなので、正標数でも確立させておく事は非常に重要な問題であった。 2つ目はフロベニウスのトレース写像と延長定理の関係について考察した論文である。昨年頃から、原、渡辺、シュウィードらによって確立されたF特異点の理輪が極小モデル理論のいくつかの定理に応用できる事がカッシーニ、ムスタタ、マッカーナンらの論文により分かってきていた。そこで私も、基定点自由性定理やフリップの存在証明にF特異点の理論を応用できるか試行錯誤していた。その最中、ヘイコンとシューによって標数が5より大きい時は、3次元のフリップが存在する事が証明された。彼らの結果もF特異点の理論を用いている。彼らの論文は、正標数の極小モデル理論における大結果であると思う。今回の私の論文でも基定点自由性定理やフリップの存在を取り扱っているが、彼らの結果とは反対にF特異点を用いる方法では標数が2の時に致命的な例が存在する事を示した。ヘイコンとシューによる論文と私の結果を鑑みると、F-特異点を用いる手法は、大きい標数でしか機能しないように思える。なので、基定点自由性定理やフリップの存在を証明する為の道具としては使えないと私の中では結論付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、知られていたアバンダンス定理を半対数的標準な場合にまで一般化する事ができた。近年、注目されていたF特異点の理論極小モデル理論にいくらかの応用を与えてきたが、基底点自由性定理の証明には役に立たない事を示す事ができた。こういう点において進展しているとはいえるが、計画以上に進展しているとは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
私が取り組んでいる問題(正標数の基底点自由性定理)は未だに手探りの状況である。その一方で、多くの専門家は成立すると信じている。現在、私は、ゼロ標数における証明の背後にいるホッジ理論やその周辺について考察している。また、別の方向として、そもそも正標数の基底点自由性定理は成立しないのではないか?という疑念を持ち始めている。この方向で進める場合は、小平消滅定理の反例やF特異点の理論が上手く振る舞わない例を考察する事が重要だと考えている。
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Research Products
(4 results)